鶴岡法斎の「恥ずかしいココロ」 第5回
2016-04-18
コラムニスト:鶴岡法斎
 ネタバレ的な話もあるかも知れないので本編を見る前の人は読まないほうがいいかもしれないです。

「鶴岡キャノンボール」。自分としてはとても大きなターニングポイントであると同時に、あまり積極的に振り返りたくないものでもあります。何しろ一番精神状態悪い時の自分がいろいろやってますから。

 もう一年半前、当時は鬱病がいまより酷くて、いまは飲まなくても平気になったんですが、新薬、鬱病の薬を飲まないと外出もままならない状態でした。家を出て、最初の角で歩いていることにしんどくなってうずくまるようなことは日常茶飯事。そんな時にテレクラキャノンボールを映画館に見に行き、とてつもない感動をもらいました。自分もまだ生きていけるかも、なんて勝手に勇気を。
そんな感想をTwitterに書いたらビーバップみのるからリプがきました。「いま501っていうのを撮ってます」と。彼の「僕と企画女優の生きる道」を見てとにかく印象が悪く、本人に会った時も、
「作品を見るかぎり、あなたは怖いので仲良くなりたくありません」とドグマの忘年会かなんかで直接伝えたビーバップみのる。そんな初対面の記憶を向こうは忘れて話しかけてきました。テレキャノの興奮もあったのか、ここで無視したら何も変わらないと思ったのか自分はみのるとコンタクトを取りました。会ってわかったのがお互いの家が歩いて20分くらいの距離だということ。まあ家に行くようになるのは時間の問題でした。

 時系列はよくわからず、かなり最初の段階、電話での会話だと思うのですがテレキャノの感想を話して、
「梁井くん、会ったことないけどセクシーだね。かっこいい。作品のなかで輝いてる」
「じゃあその思いをぶつけましょう」
 きっかけはそんなもんだと思います。自分はバイセクシャルなんでそういうのはどうでもいいですが向こうはどうなんだって話ですが、みのるはこっちの言葉を拾ってどんどん拡大、デフォルメします。後でわかったんですがその時期のみのるはBiSキャノの撮影を終えた直後。自分もみのるの部屋で何時間も説法を聞かされました。歩くのもしんどい時期に。

 いまでも思ってるけど、自分はテンテンコちゃんと話が合いますよ。同じものを経験しているんだもん。自分が提案なり妥協点を見つけないとこの話は終わらないぞ、っていう異常空間。まあ自分も「面白いことになるかも」って色気はあったんですよ。この状況を打破したいから。
「鶴岡さんのキャノンボールへの思いを形にするんですよ」っていわれて、
「鶴岡キャノンボール?」っていったらみのるがゲラゲラ笑い出して、そこで方向性というか、オチが決まったのかなあ。

 あとは本編見ていただけたらわかるんですけど、さらにそこでコバヤシユウタさんが巻き込まれて、まあ自分が声かけたんですけど、こういうことになりまして。
 自分はみっともないし、救いがないんですけど。ただこれが終わってから、現在進行形ですけど鬱も少しはよくなって、新薬飲まなくなってるんで。あと基本出てくる人とはいまでも「時々会ってる」(501完全版の編集後記そのまんま)んで。

 断片的な話いくつか。
 このあとコバヤシさんはとてつもない大きな「流れ」に巻き込まれて、自分もいろいろ心配して、「もう鶴キャノとかどうでもいいよ」っていうくらいの事になるんです。それが書けるのはもう少し未来です。
 みのるとは鶴キャノが終わってからもなぜかマメに会うようになって、昨年一年間は編集中の501をずっと見せられるという暮らしをしてました。いまでもなんだかんだで一緒のとき多いです。でも初対面の「怖い人」って印象は変わらないかな。誠心誠意を込めて相手を狂わすから。
 絶対本気じゃないけどみのるは
「鶴キャノが公開されたらみんな鶴岡さんを評価しますから。人気者ですから」とかいうけど、そんなに期待はしてないです。いま以上に嫌いになられたら切ないですけど。
 そんな訳であんまり自分は再見したくないですが、面白がってもらえたら嬉しいです。
 嘘くさくて、恥ずかしいけど、みのるにもコバヤシさんにもどこかで「ありがとう」って思ってます。ありがとう。
鶴岡法斎プロフィール

マンガ原作者、作家。

最初はエロ本のライターをやっていたのですがいろいろあって、ありすぎて現在に至ってます。

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