膣にピアス vol.5
2016-03-14
コラムニスト:ユキちゃん(NDG)
あけましておめでとうございま、した。久しぶりの更新になりますが、今回のテーマは「浮気と不倫」です。間が空いてしまったので本当は当たり障りないこといってほいほい書きあげて、早めに公開したかったのですけれど、もっと本音をみせてみろといわれたので、お母さんに泣かれる覚悟で書きます。ちくしょう。もっとフェイクを上手く使える大人にならなきゃ。

さて、前回のコラムで付き合った彼氏と4カ月で別れてしまった旨をちょろっと書きました。このコラムの余波もあってか、元彼氏のほうの友人や後輩にも、あの二人が別れたらしいっていうのがぼちぼち広まったみたいなんですが、どうやら「ユキちゃんの浮気が原因で別れたらしい」という噂になっているようです。私のイメージ悪いな!(笑)

噂になるほど興味をもたれるのはありがたいですし、まさに真実そうな噂ですけれども、残念ながら私浮気してません。ていうか浮気しません。調子がいい女だし、パフォーマンスとして誰彼かまわずチューぐらいはしますが、恋人という相手がいる間はそれらもしませんし、する前に「私がどこまでするのが嫌か。」という確認をとります。
実際に、その元彼氏と付き合っているときに、「次の青森でのライブでパフォーマンスとしてお客さんの誰かにキスをしたいがいいか?」と確認をとったら相手が泣き出してしまったので、「そんなに嫌だったか!ごめんごめん!」と居酒屋でめちゃめちゃ謝った、というエピソードもあります。浮気も、相手の嫌がることも、彼女としては絶対にしません。

浮気はしていないんですが、「私の浮気が原因で別れた」と噂されちゃうのはしょうがないのかな、とも思えます。なぜなら私は自身の浮気は否定しますが、相手の浮気は否定しないからです。浮気相手をつくられることも、浮気相手になることも、ぜんぜん嫌じゃないからです。

え!なにそれ!どうしてそうなるの!?って感じだと思うんですけど、私、恋愛関係においては相手に合わせるのが好きで好きでたまらないんです。だから確認をとって、相手が浮気されたら悲しい・嫌だ、と感じる人だった場合は絶対浮気しないし、相手がなんとなく仲良しの女の子とヤっちゃった夜があったとしても、「昨夜はお楽しみでしたね」ぐらいにしか思わないし、彼女との関係の息抜きに私と浮気したいと申し出る人がいるならば、本当に息抜き程度にしなね、と応えるんですよね。

こういう話をすると、だいたい女の友人・知人から「都合のいい女だと思われてるだけだよ。」「もっと自分のこと大事にしなよ。」って言ってもらえます。ありがとう、みんないいこだねえ。
確かに、浮気されたり浮気相手をしたり、っていうのを実際にやっている期間は、トラブルも起きるし傷つくこともあります。そういうとき、私は「友人として許せるかどうか」という判断基準で動くことにしています。
この判断基準を使うことによって、私は最悪の結末にはならないようにしているんです。

もう2年前ぐらいになりますかね。仲良くなったバンドマンの男の子の浮気相手になりました。昔から浮気している噂が絶えないタイプの男の子で、そのたびに彼女と大喧嘩しているようでした。その彼の彼女のことはよく知らなかったし、お酒をのんで遊んでいたら彼が私の家に行きたい、というので、どうぞどうぞと招き入れました。
しばらくの期間適当に遊んでいましたが、あんまりにも彼がズケズケと私の家にあがりこむようになってきたので、ある日忠告しました。ちょっと飲みに行こうよと呼び出して、中途半端な土地の中途半端な居酒屋へ。平日の寒い日の中途半端な時間帯だったからか、私たち以外に客はいませんでした。

「別になんでもいいんだけどさぁ、私のこと好きになりすぎじゃない?」

「私だって一緒にいるの楽しいし、好きだと思ってるけどさぁ彼女と別れるつもりないんでしょ?」

「こんな頻度でそんな態度とられてたら私だって貴方のこと本気で好きになっちゃうかもよ。」

「彼女のこと傷つけたくて一緒にいるわけじゃないんだし、その辺は浮気してる側のあんたが考えてよね。」

むんむん、と頷く彼はしかめっ面で、こんな話をされるのは心底嫌そうで、そんな彼に「こいつ本当にどうしようもねーな。」と思いながらも、ちょっと愛おしくも思えました。
そういうどうしようもない奴に合わせるのが、私は好きなんですよね。

結局彼との浮気関係はしばらく続き、私がどんどん好きになっちゃって、ある日彼女と別れてほしいと泣きながら懇願し、それでもやっぱり彼女と別れてくれなくて、下北沢の夜を自転車でつっぱしりながら大森靖子さんを大声でワーワー歌って泣いて帰って終わりました。

これが私の「友人として許せるかどうか基準」を使った例です。もし、このバンドマンの男の子と全く清い友人関係であったとき、ユキちゃんと彼が浮気したという事案を友人として咎めるだろうかと想像します。
おいおい、お前彼女いるじゃんとは思いつつも、第一声は「マジ!?どうだった!?」になると思うんですよね。友人として、バンドマンの彼女側の悩みや苦しみを知っていたなら、第一声は彼女を気遣ったものになったでしょうし、そうでなかったのなら、友人として興味のあるコンテンツになる。
今回の場合は、バンドマンの彼の彼女のことはよく知らなかったので、第一段階として、バンドマンの彼とSEX したという事実はおもしろコンテンツとして私の中で良しとされます。

第二段階として忠告。しばらく月日がたっても、まだ彼がユキちゃんとヤってるのを聞いたとき、「お前それ大丈夫なの?」という疑問が、友人としての立ち位置から生まれるでしょう。
実際にした忠告は浮気相手として彼に投げかけたもので「どっちかにしてよ!」のニュアンスが強めでしたが、つまるところ「彼女にはバレてないの?」「ユキちゃん付き合ってほしいとか言わないの?」「お前はこれからどうすんの?」という友人としての心配も投影します。

これらを経ての第三段階。友人としての客観的立ち位置をとれなくなるほど暴走した私の浮気心は、結局振られて撃沈します。
これ、私振られてるし、どう見ても都合のいい女でしかないし、傷ついて泣いて終わってるし、「友人として許せるかどうか」という判断基準使ったところで、ちっとも最悪の結末避けられてないかのように見えると思います。でもこれ実は、「彼女にバレる」「ユキちゃんが本気になって面倒くさくなる」「どっちの女の子からも振られる」というバンドマンの彼にとっての最悪の結末は避けられているんです。

そう!最悪な結末とは彼にとっての最悪な結末であり、それによって、「人に合わせるのが大好き」な私が、「相手の嫌がることを彼女として絶対にしない」私が、「大好きな彼に最悪な結末を迎えさせる」ことを回避しているわけです。くぅ~!分かるかな!高等恋愛テクニックすぎて分かんないかな!
大好きな彼が、「私が彼を好きなこと」によって、彼女と別れたりしたら申し訳ないじゃないですか。大好きな彼が、「私が彼を好きなこと」によって、傷ついたり困ったりするのは見たくないじゃないですか。大好きな彼が、「私が彼を好きなこと」によって、二股だ・最低の人間だなんて思われたら大変じゃないですか。だから私がいつでも友人の立ち位置に立ちつつ、甘えさせてあげて、時にはけん制してあげて、時には想いを伝えてダメだったらサっと身を引いてあげるんです。
そうしてまた、ただの友達に戻るんです。それが私なりの愛し方なんです。

さて、散々相手に対してのメリットを述べて、いかにも「自己犠牲の愛」っぽい表現をしましたが、「友人として許せるかどうか」の判断基準は、自分に対しても効果的です。
結局振られて深く傷ついたとしても、結果として都合のいい女だっただけだとしても、友人としての立ち位置は依然として保たれることよって、「私が物分かりのいい女だった」「恋人は失ったけど友人は失わなかった」「愛ゆえに身を引いてやった」という自身のプライドが守られるからです。振られた、自分が選ばれなかったという事実に目をそむけることができるんです。とっても楽です。いい子の女友達に「自分を大事にしろ」と諭されてもへっちゃらです。私はいつだって、「相手のことを優先できる自分が大事」です。

この「友人として許せるかどうか」の判断基準を使った恋愛の考え方、お勧めはしません。まぁ読んで頂きまして分かる通り、後から屁理屈を述べやすくなるとか、つまらない見栄を張れるだとか、そういったメリットしかないからです。

しかし、現在進行形で「不倫」をしている方にはぜひお勧めさせていただきます。私は、「不倫」をしたことがありません。もちろん関わっている方の年齢層が既婚者でないことのほうが多いとか、単純に年上が好きじゃないとか、いろいろ理由は重なっているとは思うのですが、この私の恋愛観から言うと、「不倫」は相手の迷惑になってしまう可能性が大きすぎてできないんです。「浮気」をして、勤めている会社をクビになるとか、慰謝料を請求されて借金を抱えるとか、両親から縁を切られるとか、あんまりないと思います。
浮気は男の性、なんて言うくらいだし、ある程度社会からの寛容があると思います。でも、「不倫」ってそうじゃないですよね。離婚したときには有責になるし、お勤め先の信用問題に関わってしまうし、ご両親の失望は測り知れないでしょうね。不倫は文化、なんて言ったあの人も、慰謝料は払ってますからね。

「浮気」はよくて「不倫」はダメとかって話ではないんです。どっちも結局バレなかったら問題にはならないでしょうし。ただ、相手のことが好きで好きでどうしようもなかったとき、自己犠牲を装って、つまらないプライドを守って、身を引いてみるのは、私は美しいことだと思います。
「相手を好きなこと」が「相手を傷つけること」になってしまう未来なんて、やっぱり耐えられないじゃないですか。宇多田ヒカルの「誰かの願いが叶うころ」じゃないですけど、自分の好意が世間的に許されないとか、誰かを傷つけてしまう類のものだなんて、信じたくないじゃないですか。そんな辛いことってないじゃないですか。

そんなの分かってる、分かり切ってる、それでも止められないのが不倫って、ええまあ、まあそうなんでしょうけど。そこまで相手と気持ちが繋がっているのなら、離婚っていう手順ぐらい相手に頑張って踏んでもらって、そこから始めてもいいわけじゃないですか。

さらに、さらに言うならば、「相手の方が愛して結婚した奥様」を傷つけるのもつらくないですか。結婚理由なんて人それぞれ。望まれない結婚だった方もいらっしゃるでしょう。
それでも私は、不倫相手として離婚を望むってことは、相手の過去を否定するってことになっちゃうような気がしてならないのです。相手が離婚したいって言っているならまだしも、そうじゃなくて、不倫してて、「離婚して私と結婚して!」って望んじゃうのは、「貴方の選択は間違ってた!」って言ってるみたいじゃないですか。私は好きな人に、大好きな人に、そんなこと言えないなって、そんな冷たいことを、恋愛感情故に言っちゃいたくないなって思ってしまうんですよね。
だったら、大好きだからこそ、相手が1mm も傷つかなくていいように、相手の過去も未来も守れるように、「不倫」は身を引いてほしいなって私は思います。

2016 年年明け早々、タレントのベッキーさんとゲスの極み乙女の川谷絵音さんとの不倫騒動が世間を賑わせましたね。まぁ、この騒動に関してはもはや不倫そのものよりも、ベッキーさんの会見前の LINE のやり取り等から、ベッキーさんの性格の悪さが叩かれ出してる感じですが。
今回はベッキーさんが別れてほしいって言ってて、川谷さんも別れるって言ってて、でも本当は全然離婚の話進んでなくて、奥様を傷つけて世間に暴露されてお互いの勤務先までがっつり迷惑がかかってしまったかんじだと思うんですけど、ってなると悪いのは川谷さんじゃんってなるんですけど。
そうなんですけど。でも私は、ベッキーさんに、川谷さんのそういうダメなところとか、嘘つくところとか、そういうの全部見抜いて愛してあげてほしかったなって。見抜けなくって全部露呈してじゃあそれでも愛してるってなったんだったら、じゃあせめて川谷さんがかつて愛していた、その奥様に、真摯に向き合ってほしかったなぁって、川谷さんのインディーズ時代を傍で支えられたというその奥様にこそ、今のベッキーさんたちの愛を伝えるべきなんじゃにかなぁと、流れてくるネットのニュースをみて思うんですよね。

好きな人が、週刊誌なんかに載っちゃたら、「ごめんなさい。私のせいで。本当にごめんなさい。」ですよね。「センテンススプリング!」はやっぱりベッキーさん性格悪いわ(笑)。
ユキちゃん(NDG)プロフィール

1991年生まれ。Nature Danger Gangのメンバー。

過激なパフォーマンスが話題を呼び、みんくちゃんねるの記事になったりエロ本の袋とじになるなどする。
一方でNDG加入前から続けているブログでは恋愛観などを赤裸々に綴っており、若者からの支持も得ている。
みんなの彼女でみんなのお母さん。喋る雪見大福。

  • YOUTUBEのチャンネル登録する