膣にピアス vol.3
2015-11-20
コラムニスト:ユキちゃん(NDG)

どMの呪い


私がはじめてAVを観たのは中学2年生の頃でした。当時携帯電話で動画が視聴できるようになったばかりの頃で、友達からチェーンメールでまわってきた、女の子がマッキーでオナる15秒ぐらいの自撮りタイプの動画をみた記憶があります。

容量のとっても少ない、あのガラケーの携帯電話に保存しました。

もうパケ放題なる通信料定額プランが普及していた時代でしたので、そこからは掲示板や動画投稿サイトから探し出し、無料でAVを閲覧するようになりました。ほとんどの男性が体験したことがあるかと思われるワンクリック詐欺にも遭いました。「会員登録が完了致しました。」の文字に震えながら月末を待った夜もあります。あれ「入会金¥100,000請求させて頂きます。尚、退会される場合は¥30,000の費用がかかります。」とか書いてあって半べそかきますよね。はい。

このように私はどこかの男性が辿ってきたような一般的AV遍歴を辿っているのですが、こういう女の子は稀だと思います。付き合った彼女と行ったラブホテルで、画面に映し出された映像に対して「AV初めてみた〜。」という彼女のあの発言は、恐らく嘘ではないので安心してください。通信速度が速くなる深夜に、携帯を握りしめながら股間に手をあてがっていた中学二年生女子は、私くらいなものかと思います。いや、そういう女の子もいたかもしれませんが、そんなことを告白できるのは私くらいなものでしょう。

実は初めてのオナニーは、さらに時代を遡って幼稚園年中さんになります。淫乱幼稚園生です。エロ漫画のなかだけの話かと思っていましたか?ここにいました〜。
第二回のおしっこコラムで告白したとおり、私は幼いころからおしっこをがまんするために股間に手をあて過ごしてきました。股間をぐっと抑えつけてがまんしていたので、股間をいじることにあまり抵抗を感じない意識が形成されていきました。その流れで、男の子がなんとなくちんちんをいじって気持ちよくて初めての射精を経験するように、なんとなく股間をいじってなんとなく気持ちよくてオナニーを習得しました。おしっこしたくなくても股間を抑えると、なんか股間がじんじんして気持ちよかったんです。

まだオナニーなんて言葉も知らない年齢でしたが、「こいつちょっと気持ちよくなってるな…」と勘づいた母によってやめるよう叱られ、叱られた結果寝る前に布団のなかでこっそり股間いじる子になりました。

あとは年齢とともに積み重ねられていく性知識に素直に興奮してみた結果、私はオナニーをする女の子になりました。

さて、そんな私ですが、今回はHMJM様の作品について書かせていただければと思います。
同じくコラムを連載している、どついたるねんの先輩がスーパースケベコラム第一回で書いていましたが、私もこのコラムの報酬としてHMJM作品見放題の特典をいただいています。どの作品も見放題なんですけど、私はもっぱらカンパニー松尾監督の作品ばかり閲覧しています。えへへ。

今回は『私を女優にして下さいAGAIN11』を視聴させていただきました。
このシリーズは素人同然の女の子をカンパニー松尾監督がハメ撮りするシリーズです。AVは素人モノが一番好きだ、という男性にはたまらないキャスティング具合になっていて、出演される女優さんは経験豊富な女優さん、というより本業は人妻やフリーターや女子大生な女性の方々。街ですれ違うかわいいあの子ではなく、地元の商店街でもすれ違うリアルな周りにいそうな女の子が多数出演しています。

今回出演されたのも28歳英会話講師という女性と20歳のアルバイト等をしている女性。お二方とも過去にAV出演経験があり、20歳のむちむち子さんは現在はAV出演のお仕事のみをされているとのことでしたが、どちら方からも「身近さ」「素人感」「こなれてない感」が感じられます。これらは冒頭の松尾監督からの女の子に対するインタビューから感じ取れる感想ですが、いざ松尾監督とのハメ撮りが始まると、なにより「演技してない感」を感じ取れることができます。これは「私を女優にしてください」シリーズのほぼすべての作品から受け取れることのできる感想です。この「演技していない感」を受け取ることができる、それがキャスティングゆえではなく、カンパニー松尾監督の作品の撮り方の、大きな魅力であると私は感じています。

カンパニー松尾監督は、嘘をつきません。作品の中で、撮影の中で。もちろん対する女性への外見的評価や、今作品においては特に撮影状況など、後から視聴者に対してネタばらし的に説明をくわえてくれるものも多いですが、女性と出会うまでの経緯、出会ってからの会話、最初のキス、ホテルに入り、合体に至るまで。女性の願望や欲求を会話の中でうまく引き出しながら、その言葉ひとつひとつのなかに、女性に対する全くの嘘やごまかし、そして否定がありません。

「あぁすんごいいやらしい格好」
「前の彼氏とこういうことしたの?」
「すっごいかわいいおしり」

AVで聞きなれた、ありきたりな攻め文句でありながら、松尾監督から発せられるそれらには、嘘も、否定もなく、許容が広がっています。
この許容こそが、出演される女性たちから「演技していない感」が発せられる鍵だと私は思っています。

もちろんAVですから、すべてが演技ではないかとはいえばそうではないでしょう。視聴者の気持ちをうまく盛り上げるための文句も含まれているでしょう。
だとしても!そうだとしても!俺はお前を見ているぞ、という確かな、信頼に値する力強い意志が、カンパニー松尾監督の言葉からは感じられるのです。

たまんねぇぇぇぇ!私も肯定してくれぇぇぇぇぇ!

これ!これが私のようなどMにはたまらんのです。そうです。私はどMなんです。

私はオナニーをするときには、AVをただの興奮材料として、オカズへの導入として使い、実際のオカズは過去の実体験を思い出してオナることのほうが多いんですが、カンパニー松尾監督の作品に関してはそのまんま。そのまんまオカズにしてオナニーできます。

だって肯定されてるんだもん!私と容姿レベルもさしてかわんないような女の子が!いやらしいねって。すごい気持いよって。褒められて認められて許容されてるんだもん!なんなら私のほうがフェラチオうまいもん!私だって「ご奉仕の基本がわかってるね」って褒められたいもん!

さらには女の子めちゃめちゃ感じてるんだもん!すべてを松尾監督にゆだねて!安心しきって、信頼しきって、まかせきって。それでいてやっぱりめちゃめちゃいやらしく撮ってもらってるんだもん!

大きな許容と、嘘をつかないことから感じる大きな信頼。これがカンパニー松尾監督の作品からはそこかしこに感じ取れます。

私はどMなんです。
初めての彼氏ができ、初めてのセックスを体験した高校2年生。ここで私が私のために形成した存在意義をある程度打ち砕かれます。私はある程度の容姿コンプレックスを抱える女学生でありました。ただ、淫乱幼稚園児の過去があり、AVも夜な夜な閲覧する過去がありましたので、「下ネタもいける中の下の女子」として自身の立ち位置を安定させておりました。しかしながら、その初めての彼氏はインポ気味だったのです。

セックスの挿入に至るまでに萎える、フェラチオする、挿入を試みる、やっぱり萎える、以下ループ。最初の頃は緊張してるのよ、私も初めてだから、と気にしていませんでしたが、回数を重ねるごとに「私に魅力がないのでは?」と思うようになり、中くらいの下だと思っていた自身の容姿に対する自信が、下ネタもいけることで補正されていた自信が、ボロボロに崩壊していきました。フェラチオは上手になりました。

大学生にはいり、モテ期を体験します。中の下くらいで、俺にもいけて、フェラチオがうまい女の子の需要が高いことを身をもって体感します。たくさんのお誘いをいただき、それらの誘いをうけました。そのころから、そんな私だけれど、中の下くらいの私だけれど、私が誰にも負けないくらいあなたを愛してあげるからね、という恋愛観が確立されていきます。 容姿に対してすっかり自信を失ってしまった私は、自身の求められ具合が、まるでまた存在してもいいよと肯定されているようでとってもうれしかったのです。その肯定をより明確なものに、力強いものにするために、私にしかできない恩返しを「愛」をあげたいと思うようになります。

自己犠牲精神で、社会的欲求と恋愛的欲求を満たすようになります。

そうして大学生のとき、一人の男性と出会います。彼は容姿的にかなりレベルの高い男性で、それでいて独特のセンスを持つ男性でした。初めて会話を交わしたとき、彼は脚にヘナタトゥーを入れていた、といえばどういうタイプの独特のセンスの人間だったか想像できるかと思います。お付き合いをするようになり、「独特の感性(笑)」をもつ彼の恋愛観に必死で見合おうとし、メンヘラというカテゴリーも手に入れました。

それでいて私たちは20歳前後だったのです。性欲ブリブリでした。
気持ちいいことならなんでも試しました。性欲が旺盛である、自身が自己犠牲精神のもとに形成されている、この二点で私の「どM」は完成されました。
誰にとっても、後ろを歩いている女の子でいい。君の苦しみや悲しみを理解できること、君が辛いときに傍にいれること、私だけは、貴方にあいそを尽かさないの、信じられるでしょ?と心の底から言えることがしあわせ。
だから貴方はこんなどうしようもない私の首を絞めて、肉を噛んで、後ろからこの性器を突いてください。誰よりも貴方を許容する私にすべての性欲をぶちまけて、私の性器で逝ってください。
私より好きな子がいてもいい。私よりも美しい子はたくさんいるの。でも私より貴方を許容できる人間なんていないってこと。それを身を尽くして伝えるの。これが私から与えられる、愛なの。

でもこれは呪いでもあるの。優しさを盾にした呪い。

メンヘラ成分がヒートアップしました。まぁそんな具合に自己犠牲どMでありまして、そんな私は誰にも肯定されなくてもよいわけで、セックスで感じてくれればそれが私の受ける最大の肯定でしてしあわせでして。だからカンパニー松尾監督の作品には肯定があって最高なんです。

ここまで読んで、「あぁ…そう。」ってある程度引かれるかと思うんですけど、でもたぶんきっとちょっと分かると思いますよ。

紹介させていただいた「私を女優にして下さいAGAIN11」のなかにはあるシーンがあります。なるべく作品の細かい内容に関してはあえて触れないように書くつもりでしたが、この作品を取り上げる上で、ここだけは避けられないと個人的に思いましたので、ここだけ。
先で「今作品においては特に撮影状況など、後から視聴者に対してネタばらし的に説明をくわえてくれるものも多いですが」と書きましたが、この作品ではカンパニー松尾監督の家庭状況について説明されるシーンがあります。このシーンはAVにおいては普通挟まれることのないシーンだと思いますし、そこに映し出される松尾監督の家族の姿は、オナニー意欲を喪失させてしまう恐れがあるほどリアルなものになっています。
これはカンパニー松尾監督から、女優さんに向けてではなく、視聴者に向けて与えられる「嘘のなさ」だと、私は見ていて感じました。視聴者に対する「嘘のなさ」。視聴者に向けても与えられる「許容」と「信頼」。お前にこれ、見せてもいいよ、といってくれること。

この作品をみたとき、きっとあなたにもこのカンパニー松尾監督からの「許容」と「信頼」は伝わるかと思います。あなたがどMじゃなくとも、きっと。
ユキちゃん(NDG)プロフィール

1991年生まれ。Nature Danger Gangのメンバー。

過激なパフォーマンスが話題を呼び、みんくちゃんねるの記事になったりエロ本の袋とじになるなどする。
一方でNDG加入前から続けているブログでは恋愛観などを赤裸々に綴っており、若者からの支持も得ている。
みんなの彼女でみんなのお母さん。喋る雪見大福。

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