モッシュピットへの道(松尾編)聞き手:はせおやさい


こんにちは、はせおやさいです。

多忙なカンパニー松尾監督に代わり、今回この場におじゃまさせていただくことになりました。普段はブログなどを書いておりまして、平野勝之監督「青春100キロ」のレビュー記事や、岩淵弘樹監督「モッシュピット」のパンフレットに監督インタビューを書かせていただいたりしております。どうぞよろしくお願いいたします。

さて、いよいよ5/21(土)に岩淵弘樹監督・映画『モッシュピット』が劇場公開!ということで、松尾監督にお話を伺いながら、なぜハマジムが劇場版を手掛けることになったのか?なぜHave a Nice Day!(以下ハバナイ)を追ってみようと思ったのか?そして、本作の監督である岩淵弘樹さんについて松尾監督はどうご覧になっているか、を紐解いてみようと思います。
松尾監督セレクトの関連動画もあわせてご紹介していきますので、しばし、おつきあいいただければ幸いです。
-----

ーーーということで、よろしくお願いいたします!いろいろ伺いたいことはたくさんあるのですが、そもそも、ハマジムが映画館で作品を上映するようになったきっけかけから。これは『テレクラキャノンボール2013』が最初、ですか?


△『テレクラキャノンボール2013』 特報

「そうですね。『テレキャノ2013』は最初AVとして作っていて、そのときから劇場版のお話もあった。テレキャノの2009を観てくれていたオーディトリウム渋谷(2014年10月閉館。現ユーロライブ)の杉原さんという方がいて、彼からテレキャノの新作は、劇場版も作ってもらえませんか、と言われていたんです。でも僕は元々映画なんて好きじゃなかったし、思い入れもなかった。なので渋っていたんですが、彼から『劇場空間という場所において、面白い映像なら、映画じゃなくて良いんです』と言われて、あ、そうなんだ、じゃ今までのオレのスタイルでいいんだ、と思った」

ーーー『劇場公開』には、特に思い入れがなかったんでしょうか?

「なかったですね。でも作品を劇場公開することに対する心理的な敷居を杉原さんが取り払ってくれた。それでじゃあやってみるか、と、劇場版用に編集して、チラシを作ってポスターを作って公開しました、というだけでした。あまり事前告知もできなかったしね。そんな感じだったので、公開した後の結果はどっちでもいいや、と思ってた。でも公開してから、僕の中で今まで味わったことがない、体験したことがない経験があったんです」

ーーーAV作品とはまた違う体験?

「そう。大きなスクリーンでみんなで観る、という体験は、大きかった。AV作品はソフト化されて販売になった後、リアルな感想を聞ける機会が、あまりないんですよね。おおっぴらにAVの感想を書く人も、あまりいないし。それでいうと、AV雑誌なんかを除いて、AV監督が褒められることって、あまり機会がないんですよ。それが映画館で上映したことで、観てくれた人たちが手を叩いて笑ってくれて、「おもしろかった!」って言ってくれたり、笑顔で帰ってくれたのが、気持ちよかった。達成感というか、快感があったんです。AV以外のお客さんに来てもらうきっかけにもなったし、それに自主興行という形をとったこともあって、自分たちでこういう場を作れるんだ、という発見も大きかったですね」

ーーーその後、『劇場版BiSキャノンボール』『劇場版501』と、劇場公開作品を次々と手がけられ、話題を呼びましたが、今回の『モッシュピット』も、最初から劇場版を想定していらっしゃったんでしょうか?

http://gyao.yahoo.co.jp/player/00943/v00105/v0000000000000000069/
△BiS 「BiSキャノンボール SSTV版」


△劇場版501

「これは映画にして劇場公開したほうがいい、と決めたのは、岩淵が作ったハバナイの『blood on the moshpit』MVの、社内試写を観たときです。ハバナイの浅見さんと岩淵が作り出した世界観が良かったし、これから売れようとしているバンドがもがいてる内省的な感じ、浅見さんのモノローグも含めて、文学的なものを感じたんですね。あとは単純に、浅見北斗という人がカッコよくて、彼のこの世界を、もっといろんな人に広げたい、と思った」

ーーーその答えのひとつが、劇場公開だった。

「彼はもっと大きなライブをやることに挑戦しようとしていたし、それを僕らがサポートできるとしたら、やはり映像に残すことだろうと思いました。ライブというのは来た人の体験だ、という見方もあるけれど、今回は追体験できるような形で、浅見さんがもっと大きな世界に喧嘩を売っていく姿を記録に残しておきたい、広めたいと思ったんです。彼らにはそれだけの魅力があると思ったし、『blood on the〜』で見せた彼らの姿勢や戸惑い、彼らの物語を膨らましたら、これ、映画になるじゃん!と思いました。映画のことなんて、わかってないくせにね(笑)」

ーーー(笑)逆に「映画」という手法が分かっていないことで作れた、というのがあったのかもしれませんね。

「確かにね(笑)僕が映画の法則を分かっていないから作れたっていうのは、あるかもしれない。それってAVも同じなんです。僕は女の人が分かんないから、AVを撮ってる。それに自分の想像の中で分かったつもりになっていたら、AVなんて撮る必要ないじゃん、と思うんです。ドキュメンタリーにする必要がない。分かんないから撮るし、その人の本体を知りたい、分かりたいと思ってぶつかるんだけど、やっぱり分かんない。無駄かもしれないと思いながら答え探しを今もやり続けてるんだけど、そこが僕のモチベーションになっていいます。今回も、浅見さんに魅力を感じつつもよく分かんなくて、だからこそ撮りたい、と思ったのかもしれない。というか、分かりやすいもの、サービス精神が発揮されているもの、完成された、よくできたものに、僕は昔から興味がないんです」

ーーー豊田道倫さんのような、不器用でずっと完成しないイメージのあるアーティストに魅力を感じられている印象がありますね。

「そうそう。きれいに整った五角形みたいなものは面白くなくて、いびつではみ出していたり、当たりどころが悪かったら怪我するし、嫌な思いをするかもしれないよ、というものに魅力を感じる。浅見さんもそうですね。最初、浅見さんと『夏の魔物』(2015年9月に青森で開催された野外フェス)の楽屋でお会いしたときに、全然しゃべってくれなかったんですよ。たぶん一言もしゃべらなかったんじゃないかな。彼はずっとフードをかぶって、身体を動かしていてね。逆にそこが印象に残ったし、ミュージシャンぽいな、この人にはカリスマ性、神秘性があるな、と感じた。最近では珍しいタイプのように思いました。彼はヒールぶるときもあるけれど、ナイーブだし、ロマンティストだし、一方でとてもリアリストな一面もある。まったく分からなくて、そこに魅力がありますね」

ーーー結局、松尾監督はAVでも音楽ドキュメンタリーでも、『その人』を知りたいし、伝えたいんですね。

「そうですね。ほんとそうで、AVでもなんでも、『人間』を伝えたいと思って撮ってます。映画とかドキュメンタリーって、もちろん観てくれる人に分からせようともするんだけれど、最終的には観る人それぞれに委ねてしまう部分も多い。委ねる幅の違いはあるけれどね。ただ、僕たちは浅見さんにロマンスを感じているし、人間として、男として、ロックミュージシャンとしての色気を感じてる。その魅力を、僕たちの映像を通じて伝えていきたい、と思っていますね」

ーーー『モッシュピット』の監督である岩淵弘樹さんと松尾監督の出会いのきっかけは、何だったんですか?

「最初は『遭難フリーター』に豊田道倫さんの音楽が使われる、というのを聞いて、しぶしぶ観に行ったんです(笑)。僕は映画が好きじゃなかったから、興味はなかった。どちらかというと、映画の作り云々というよりも、映画の中で岩淵がメシ食ってるだけなのに、それだけのシーンで何かを感じさせる男ってすげえな、という評価だった」


△「遭難フリーター」予告編

ーーー監督として、というよりは人間として面白いな、という感じでしょうか?

「監督としては、甘いな、と思いました(笑)」

ーーー岩淵監督がその後に撮られた、大森靖子さん主演『サマーセール』も松尾監督は酷評されていた、というお話を聞きました。


△「サマーセール」予告

「彼が『遭難フリーター』を撮って話題になった後に、派遣の仕事を辞めて、介護の仕事をしたりしながら映像を撮っているらしい、ということは知っていて。あとは、豊田道倫さん周りの撮影に来てくれていたりね。それで『サマーセール』を撮りました、というのを知らせてくれたんですが、今の形、後日談が入る前の編集で、歌舞伎町のラブホテルだけで完結した、もっとナマナマしい作品だったんですよ。それもそれで悪くはなかったんですが……。で、作品を観てみたら、やたら大森さんに当たりがキツいし、あまりいい印象を受けなかったんです。でもそれは彼がバレー部出身の体育会系気質で、上下関係に厳しい、年下にキツいというだけだったんですけど、まあそういうことを知らないと、印象はあまり良くないですよね。なので、僕はそういうところが気に障ったのと、編集技術・撮影技術もちょっとそんなに良くないなと思って、ポロッと「岩淵は映像をやめたほうがいい」と言ったのが、人伝てで本人に伝わってしまったんです。それが『サマーセール』に出てくる、「岩淵はやめたほうがいい」発言(笑)」

ーーーそれを聞いた岩淵監督は、どうされたんでしょうか?

「岩淵はショックを受けつつ、僕に電話をしてきて。なぜか今度は僕を撮る!とか言い出して(笑)、こいつ根性あるな〜と思ったんですが、まあそんな感じで付き合いはあったんです。僕が『サマーセール』を酷評したのも、ハッパをかけるという意図があったし、そういう、彼に対する期待や信頼関係の素地はあると思っていたから言ったわけで、もともと人間的な評価、人柄は好ましく思っていて。彼の作品を見れば分かると思うんですが、一本気というか不器用というか、そういう男なんですよね。その後、どついたるねんというバンドを撮ることになったんですが、もともと岩淵の紹介だったこともあり、岩淵がどついたるねんの窓口になっていたので、やりとりが増えていた(注:松尾はテレキャノのイベントにどついたるねんを呼ぼうとしており、その窓口が岩淵だった)。そんな状況の中、ハマジムにもう1人くらいスタッフを増やそうかと話していたときに、うちの今田(タートル今田監督)が、岩淵はどうですか、と言ってくれたんですよ」

ーーーそこで今田監督のお名前が挙がるのは、意外です!

「そうですか?今田はけっこうキーパーソンですよ。彼は人をよく見ているんですよね。あと、人の懐に入るのがうまい」

ーーー確かに、『モッシュピット』本編でも、ちょこちょこメンバーやファンの方とおしゃべりしている様子が写ってましたね。

「そう!僕とか岩淵みたいに、どうしても撮影者と被写体、という立場を忘れられないタイプとは違って、スッと入っていける人間性がある。どんな人ともフラットに話せるんです。そういう今田が岩淵を見ていて、あいつはなかなか頑張ってるし、どうですか、と推薦してくれたのがきっかけでしたね」

ーーーそのときにはもう『サマーセール』での印象は変わっていたんでしょうか?

「あ、その前に岩淵を見直したきっかけがあって。どついたるねんの『such a sweet lady』。このMVが良かったんですよ。うちに入社する1年くらい前ですね。『サマーセール』で岩淵に厳しいダメ出しをしたものの、その後、彼に対する評価を変えたのが、この作品でした。あれっ、一皮むけたな、と思いました。彼は決して器用なタイプじゃないんですけど、真面目にコツコツと努力を積み上げることができる男です。僕が『サマーセール』をこき下ろしたりしても、めげずにここまでやってきているしね。彼はやってきたことを、1つ1つちゃんと糧にしてきているんだと思いました。そこで『blood on the〜』のMVを観て、岩淵に期待したいと思った」


△どついたるねん「such a sweet lady」

ーーー松尾監督ご自身も浅見さんに魅力を感じつつ、岩淵監督に任せた、というのも、そういう経緯があったからでしょうか?

「そうですね。それにあのMVを観て、岩淵と浅見さんの間に信頼関係があるのを感じたので、彼に任せたほうがいいと思いました。他の人が撮るのは違うなと。もちろん僕自身が浅見北斗本人と、それを取り巻く人たちにも魅力を感じていたし、岩淵個人にも期待している部分があった。僕はミュージシャンのカッコいいところ、ライブの幕がバーンと落ちてよかったね、だけで終わるんじゃなくて、ミュージシャン本人が、人間としてどんなふうにステージに立って、どんな思いを抱えているのかを知りたいし、観てもらいたい。そういう物語が、ファンのためだけの映像で終わるんじゃなくて、知らない人にまで届いて欲しいと思っています。なので、『blood on the〜』もMVだけで終わるのはもったいない、劇場版として公開し、広く伝えるために、岩淵にやらせてみよう、と思いました」


△Have a Nice Day!『 blood on the mosh pit』

ーーー『サマーセール』での評価からの大逆転、ですね?

「まだまだですけどね!(笑)でもよくあそこからここまで、僕の評価をひっくり返したな、と思いますよ。まあまだ分からないですけどね。今回のように劇場版で公開するというのは、ミュージシャンのファン以外の目にも晒される、ということでもあるんです。ミュージシャン本人がカッコよく写っていればいい、というものではなくて、厳しい評価を受ける可能性もじゅうぶんある。映画館のファンもいるしね。それでも彼はここで折れるような子じゃないと思うし、万一、厳しい評価を受けることがあっても、彼は元々映画監督としてデビューしているから、いい機会になると思っています」

ーーー今回は、ファン以外の人たちにも伝わるよう特に意識して編集されたとも聞きました。

「そうですね。ファンだけに向けた映画にならないよう意識しました。僕はやっぱりミュージシャンの人間そのものを知りたいし、観せたい。どういう気持ちでステージに立つのか、カッコいい姿だけじゃなく、裏側や素顔を捉えようと試みるのはAVと同じで、結局はその人という『人間』を写したいんですよね。この映画をきっかけに、新しく彼らを知る人が増えて欲しいと思っているし。今回はハバナイは浅見北斗という人の世界観と、彼が描いた夢だけでなく、そこに巻き込まれていったファンたちの姿が面白いので、そこをぜひ観て欲しいですね。特にファンたちの姿は、プロローグ版にはあまり盛り込まれていない部分ですが、思わぬ展開がありますよ!」

---
松尾監督、ありがとうございました!
まだまだお伝えしたいこともあるのですが、まずは劇場へ!そしてその目で確かめてみてください。


△モッシュピット〜プロローグWEB版 本編5/21(土)〜レイトショー公開!!

松尾監督が魅了され、岩淵監督が織り上げた東京アンダーグラウンドシーンの物語、映画『モッシュピット』は5/21(土)より渋谷・ユーロスペースにて、2週間限定レイトショーです!浅見北斗さんをはじめ、豪華なゲストを迎えた舞台挨拶やトークショも予定されていますので、スケジュールはこちらをチェック!
http://www.hamajim.com/news/20160513-180531.php


ーーー
hase0831(はせ おやさい)
会社員 兼 ブロガー。
好きなものはお酒と読書とインターネット。ブログ『インターネットの備忘録( http://hase0831.hatenablog.jp/ )』を中心に活動。

会員登録はこちら
  • YOUTUBEのチャンネル登録する
RELATEDE MOVIE