あれからずっと熱っぽい vol.7
2017-02-09
コラムニスト:平野大地
お久しぶりです。ひらのです。

昨年の夏以降、ハマジムから遠ざかっちゃっていました。
その一方で、仕事も慣れてきて、そつなくこなせるようになってきました。
社会人っぽいことをするたびに、
「ああ、これでいいのかな、おれ」
「でもこれしかいま自分が社会にもたらすことができるものはないなあ」
という自問自答を繰り返しながら、しがみついて、本当にやるべきことを探しています。

僕に会ったことのある人からすると信じられないでしょうが、僕はいま通常の仕事の他に会社の採用も一部やっています。
といっても正社員とかではなく、インターンやアルバイトがメインです。

とはいえきちんとした面接をやりますし、採用した人たちはまず僕の元でライターとして働き始めます。

うちの会社は規模が小さく、新卒を一気に採用するような体力もないため、基本的に中途か紹介、あるいはバイトから下積みして社員になる人がほとんど。
だからバイトといえど、社員候補を採用するというのとほぼ同義。
そんな人材集めとしかも育成を僕がやっているわけです。
トランプが大統領選で勝ったときくらいの驚きっすよね。

募集職種はライターで某アルバイト募集サイトに出稿し、候補者を集めていました。
あんまり応募してこないだろうな、なんて考えていたんですが、結局僕は一ヶ月間で20人以上の応募者の方々と会うことになります。

これまでぼくも色んな人に会ってきたと思っていましたが、改めてこの世界には本当に色んな人がいるんだと身に沁みました。
フリーターや大学生が主でしたが、バンドのマネージャーをやってたり、ライターという肩書きにこだわる人、会社を作りたい人、フリーで働けるようになりたい人など様々です。

その候補者の中から5人程に絞り、最終的には3人のアルバイトを雇用することになりました。

そのうちの一人を、仮にBくんとさせてください。
彼はとても頭が切れて、ハキハキとした話し方で社会人のマナーも心得ているとても優秀な人でした。
新卒三年目、年齢としては僕の一つ上の先輩です。

前の会社も2年半ほど続けていて、そこで紙とWebの両方のライターをやっていたそうです。
経験者だし、ちゃんと会話もできるし(これがけっこうできない人が多かった)、何より僕が彼と話すのが楽しくて、ぜひ会社に欲しいと採用を決めました。

そのB君は会社を経営していました。友達同士で立ち上げた小さな会社です。彼はその会社を作るために前職を辞め、とはいえそれだけで食っていけるはずもなく・・・。
だから事業形態が近いウチに来れば、自分のためにも役に立つし、自分の経験もウチに活かせる、というのが彼の志望動機でした。

彼は採用後もとても能動的に動いてくれて、また周りの人とのコミュニケーションもよく取ってくれて、すぐに馴染みました。

それからしばらく経って、彼を社員にするという裏命題を果たすべく、僕は彼にこの会社に入ってくれないか、ということをそれとなく伝えていました。

彼は経営者でもあったので、正直すぐに来てほしいというふうではなく、機会があったらぜひウチに、くらいの誘い方です。
部署長たちも気に入っていて、うちの部署に欲しい、と社長に掛け合ってくれる人もいました。

僕らの予想に反して、彼はバイトとして入ってから三ヶ月経った段階で社員として正式雇用となり、晴れて彼は僕の同僚となったのです。


「BiS 誕生の詩」。
これはある会社の採用活動に密着したドキュメンタリー映画です。
すみません、うそです。
当たり前に違います。
でもいまの僕にとってこの映画は、会ってすぐの人をどれだけ信用していいのか、選ばれる側にとって信用はどこで勝ち取るのか、というテーマを持って突進してきました。

とはいえ僕は見る前は正直、あまり期待してませんでした。
BiSキャノンボールは見ていましたし、面白かったですが、そのときはすでに解散してしまっていたので、結局そこまでBiSに興味を持てず、そのあとなんだか面白い名前のアイドルがいるんだな、と思ってTwitterを見ていたのがゴ・ジーラちゃんで、ほんとそれくらいの知識しかない状態で観に行きました。

だから渡辺さんへの敬いも恐れもなく、またBiSの歴史への崇拝もなく、肩入れするとしたら、なんか大事な状況で寝ちゃってポンコツ具合を発揮したエリザベス宮地さんくらい。
アイドルは凄いと思うけれど、ものすごい熱量を持って追い掛けていたこともなく、だからたぶんこの映画を観に来た人の中では、僕は冷めているほうですね。

冒頭も「うーん、あんまり入り込めないなあ」って感じ。
「登場人物多いし、覚えなきゃわからんし、っていうかナレーションSiriかよ!」みたいな。
あとは、「あ、松尾さんの声だ! 今田さんの声だ! あ、今田さん写った!」とか、もうほんとそんな内輪のネタでひとりで盛り上がっていました。

でも渡辺さんのある言葉によって、僕は一気にこの映画に引き込まれます。

渡辺さんはそれまで厳しい言葉を候補生たちに浴びせかけ続け、候補生達はもちろん自分も追い込んで行きます。
その様子はとても面白かった。
合間合間に挟まるBiSの軌跡の紹介に「アイドル、っていうかBiSっていろんなことやってたのね」とか、改めてそのあたりのことにも興味をそそられました。

しかし、その段階でも僕は候補生のすぐ泣くところとかに、イラついたりとかしちゃって、しかもゴジラちゃん以外名前覚えられんし、最近覚えなきゃいけないこと以外、本当に覚えられなくなってきて、ああ社会人ぽいな自分、っていつの間にか自分に酔ってたりして、あとは、この安藤サクラ似の子めちゃいいな、とかとにかくちょっと内容に集中できなかったんすよ。

でもオーディション合宿も折り返し地点、うっすらゴールが見えかけたときのインタビューで渡辺さんが「情がうつってきて、選べない」と嬉しそうな困り顔で言ったのです。

「情がうつってきた」

そりゃそうっすよね。
あんだけ一緒にいて、かわいい女の子たちがんばってるのを見てたら情はうつるもんですよ。
わかるわかる。

でもどうしてか、ものすごくこの言葉に引きつけられ、同時に僕はB君を思い出します。


B君は実はすでに僕の会社にはいません。
彼は1月1日に社員になり、3週間足らずで会社を去りました。

発端は些細な人間関係のもつれでした。
僕の会社は平均年齢が25歳くらいととても若く、そう、若いんですよ。
だから未熟で、みんなペーペー。
だからこそ僕はこの沈みそうないかだを必死で補修・補強しながら軍艦へと育て上げていくのを楽しんでいるんですが、時によってその仲介をできる大人がいないことで水漏れが起きたりします。

ぼくより年下だけれど、ものすごく頭が切れて実際の成績も良い後輩がいます。彼は若さに違わぬ勢いと主体性があり、社内でもそれは認められていました。

その彼とB君が衝突しました。
年下の彼がB君の仕事の不慣れさを、それこそ若さ溢れるなかなかきつい言葉で指摘したのです。

もちろん社員になって3週間、B君の上長も彼が完璧にやれるなんて思っていません。
むしろそんなことは起きて当然、むしろ起きたほうが健全なくらいだと捉えていました。

ところが彼は次の日から突然会社に来なくなります。
やがて休んで3日目、「辞めたい」と彼から申し出があったと聞かされました。

上長も社長も、残るよう説得しました。
しかし彼は辞める意思を曲げず、そのまま船を降りました。

社長曰く、B君はうちの会社に働きにきていたのではなく、“学び”に来ていたそうです。
B君自身、彼は自分で会社を立ち上げるのが目標でした。
実際立ち上げたまではよかったのですが、マネタイズができておらず、社員は他の会社に所属しながら副業的に従事していて、給料を払うという形までは至っていませんでした。

だから近い年齢の人が社長を務めるうちの会社に、学びにきていた。
そしてバイトの3ヶ月間、社員の3週間のうちに学び切り、一定自分の優秀さもわかった。
にも関わらず、年下のペーペーから変な指摘をもらって、もういいかなって。
だから、辞めます。

簡単に言えばこういうことです。

B君と僕は本や映画などの趣味が合って、けっこう仲が良かったと思っていました。
昼飯とかもけっこう一緒に食べに行ってましたし、喫煙所でつい長く雑談しちゃったり、あとは二人でプロレスを観に行って、その帰りにラーメンを食べたこともありました。
楽しかったなあ。

んで?
その始末がこれかよ。

僕だけでなく、上長にも何の連絡もよこさず、消えたんすよ、あいつは。
別に謝れとかってわけじゃない。
あんたが会社やってるってのは知ってたし、遅かれ早かれ会社を出るってことも覚悟してたよ。
でもさ、辞めるにしても、一回会社に来いよ、と。
筋を通せ、と。


渡辺さんは「自分はサイコパスだ
と自虐していました。
でも僕には、彼は典型的な義理と人情の人に見えました。
つけ加えるなら、彼は特に人情を大事にする人だとも思います。

合格者を発表する渡辺さんの表情はとても厳しく、毅然としていました。
でも、その顔、なんか違う気がする。
その違和感はプー・ルイちゃんの名前を呼んだときの彼の表情で証明されました。
あのシーン、僕は彼の顔ばかり見ていたんです。

ドキュメンタリーは編集された時点で嘘ばっかりだけど、彼があの映画で見せた涙はパフォーマンスには見えなかった。
同期で長い付き合いでもある清水さんが演技半分本気半分って言ってたんでそうなのかもしれないですけど。

でも、どうしてもそんな器用な人には見えない。
つらくながい合宿に最後まで付き合ってくれた彼女達への人情だけでできた純粋できれいな涙だったと僕は思います。


学生、就活生、バイトから、いつの間にか会社員になり、最近になって急激に社会人っぽくなってきました。
中身は全然変わってないですけど。

バイトとかインターンっていのが、会社にとってとても微妙なポジションなんだというのを痛感しています。

B君以外に採用した二人のバイトは、いまもせっせとうちで働いてくれています。
彼らは会社の人間ではないけれど、お金をもらっている以上、会社の人間ではないわけでもない。
だから僕は会社の人間としての義理と一人の人間としての人情というもの、この二つをもって彼らと接していかなければいけなくて、それがすごく難しいです。

この映画の渡辺さんを見てひとつわかったのは、僕はどちらかというと義理の人なんだと思います。

僕はB君が辞めると言っていると聞いたとき、「まあ、いいんじゃない」と思いました。
僕も前の会社をかなり早い段階で辞めていますし、辞めること自体は別に問題ないですよ。
むしろ辞めたいなら自分にも会社にも損害だし早いほうがいい、とか思っています。
ただ、辞め方だけは、俺は違かったよ。
ちゃんと引き継ぎもしたし、挨拶もした。
雇ってくれた義理は義理で返した。

かといってB君がもしいま連絡を取ってきても全然返せるんすよね。
プロレスも二人で行けるし。

たぶん僕は、彼以外の誰が辞めても「良いんじゃない?」って感じると思います。

HMJMへの愛は僕の人情すべてで出来上がっているんで、一喜一憂しますけど。

とにかく僕のいまはこんな感じです。
社会人2年目がちょっと偉そうなことを言うようになってきました。

たぶん、みんな僕が働いている姿見たらびっくりしますよ。

そうそう、渡辺さんが『SiS消滅の詩』で「全員抱いてほしいみたいな目でみてたね」みたいなこと、言ってました。
それですわ、たぶん。
平野大地プロフィール

1992年12月5日生まれ。
現在無職。
「テレクラキャノンボール上映会@日芸」の主催者。

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