あれからずっと熱っぽい vol.5
2016-06-21
コラムニスト:平野大地
僕は音楽が好きです。
学生の頃に比べれば最近は減りましたけど、ライブとかフェスとかもよく行きます。

でも東京の小さなライブハウスだろうが、フジロックみたいな野外フェスだろうが、ものすごく好きなバンドが演奏していても僕がモッシュピットに入ることは滅多にありません。

「あんな押しつぶされながら音楽を聴くのはやだなあ」っていうのと、なんか正直ダサいって思ってます。
「僕は音楽を聴くのが好きなんであって、音楽に狂ったり夢中になりたいってわけじゃないし」ってちょっとバカにしてたりもする人です。

でも今年の2月に「モッシュピット」のプロローグを観た直後、「俺って実はライブっていうのを楽しみきれてないのかもしれない」ってちょっと思いました。

メジャーとはかけ離れた場所で、でもあれだけ熱狂しているファンがいて、アーティスト自身もそれに応えるためにあがいている。
そんな彼らに少なからず僕は魅力を感じていました。

でも残念ながら、僕はやっぱりモッシュピットに入れない人間だったみたいです。


僕はこれまでの岩淵さんの作品が好きです。
べつにこれからdisるからフォロー入れようってんじゃありません。
っていうか僕がフォロー入れたところで何も起こりませんし、誰も救われません。

ただとにかく僕は岩淵さんの作品とか文章とかが好きっていうことを言いたいだけです。

特に「遭難フリーター」は、いまの自分と同じ年齢の岩淵さんが作っているというのもあって、僕にとっては岩淵さんという人の像を決定づける作品です。
しかもこれを初めて見たときの僕はニートだったわけですから、なおさら心を奪われました。

世の中に不満をぶちまけ、周りに嫉妬し、煮え切らない自分に翻弄され、それでも続く人生を歩む。
そういう1人の人間の脆さに共感したし、「俺は何でもできる」という強さに惹かれました。

でもモッシュピットはずっとよくわからん世界がひたすらスクリーンを流れていて、終始ぼーっとしているしかありませんでした。

エンドロールが終わり、ライトに照らし出されたスクリーンを観て「あれ、こんなにでかかったけ?」と思うくらい、上映中はものすごく遠くの景色をひたすら観させられたような感覚がありました。

なんでぼーっとしちゃったのか。
たぶんその理由は疎外感です。

僕はハバナイもNDGもおやホロもほとんど、っていうか全く知らない。
だから興味があったし、見る前は映画の内容が想像ができなかったんです。

リキッドルームに向かって突っ走っていくまでの彼らがどんな行動に出るのか、彼らの仲が壊れるのか、それともより一層結束が強くなるのか、もしかしたら岩淵さんが油を撒くのかも、とか色々想像していました。

「絶対に何か面白いことが起こる」
そう思って劇場に足を運びました。

もしかしたら期待の方向が的外れなのかもしれません。
でも僕にとって、HMJMの監督の映画を観るってことは、そういうことなんですよね。


だから僕は心の底から落胆しました。

「ロックンロールにロマンスを取り戻せ」
映画が終わった後も、この抽象的なキャッチコピーは抽象的なままでした。
この人たちのロックンロールってなんなんだろう。
ロマンスって何を差してるんだろう。

結局僕のその疑問、あるいは引っかかりは解決しないまま、映画は終わります。

楽屋の様子が定点カメラで映されたエンドロールの最後の一秒まで、僕は突き放されたまま、ファンと彼らが踊り狂う姿を観ていました。
そしてその中の誰も僕を誘ってくれませんでした。

思い返してみると、僕は途中からハバナイよりNDGの方にずっと興味をそそられました。

印象に残っているのは、NDGのメンバー達が路上で酒を飲みながらぶつかり合うシーン。
ここだけはすぐ近くで起こっていることのように感じられました。

長く一緒にライブをやってきたバンドとの差、浅見さんというカリスマへのおののき、メンバー同士の亀裂、脱退、でも俺たちは俺たちだし、とにかくやるしかないし、それしかない。

嫉妬と尊敬と羨望が入り交じって、濁っているんだけどどこかさわやかな感情を抱えている彼ら。
ものすごく魅力的で、かっこよかったっす。

でもNDGの物語はそこでほぼ終わり。

あとおやホロファンの高校生の男の子。
彼もすごくかっこよかった。

「おまえらは地下アイドルの良さをわかってない」
電車で彼が友達に向かって放った一言。

僕はあんなこと言えないです。
最近の僕といえば「好きなものは人それぞれ」なんて言い訳して、自分が好きなものを相手に語ろうとすることから逃げていました。

高校の頃、僕も確かに相手のことも考えず自分の信じたものを他人に押し付けようとしていました。
好きなものを好きと言い、さらにその魅力を必死で相手に伝えようとしていた。

でもそれって実は他に同じものを好きな仲間がいないとなかなかできない。
たぶんあそこまで地下アイドルにハマっているのは、学校で彼ひとりなんですよ。

彼はこれまでそういう好きなものは隠してきたのかもしれない。
でもその変なプライドをぶっ壊すなにかをおやホロに感じたのかもしれない。

バイト情報のフリーペーパーを雨避けにして、ずぶ濡れになっている彼の物語を俺はもっと知りたかった。


浅見さんが主役であること自体は良いんです。
でも主役だからこそ、彼が主役たる所以が知りたかったんですよね。

映画からは正直、浅見さん自身のことは全然わかんなかったんですよ。

内藤さんとの関係性もそうです。
古参のファンが彼をリスペクトしている理由もなにひとつわからなかった。
どうしてそのときの喧嘩だけで彼らは決別してしまったのか、それもよくわからなかった。

もしファンだったら凄く楽しめる映画だったのかもしれない。
きっと彼らの関係性とか歴史を知っていれば、八月ちゃんかわいい以外にもっと何かを感じることができたのかもしれない。

岩淵さんがいないから、物語が散漫して、主役が飽和して、八月ちゃんが可愛かった。

たしかに音楽ライブの緊迫感や異様な空気感を映像で伝えるのはすごく難しいことだと思います。
そこはやっぱり生には叶わない。

だからこそ、僕は映像だからできる、ドキュメンタリーだからできる岩淵さん目線の彼らを観たかった。

てか梁井さんがNDGのユキちゃんの取材に当てる辺り、え、ここでセックスおっぱじまる?
って普通だったら有り得ない展開だけど、ハマジムの作品ってけっこうやっちゃいそうじゃないですか。
やっぱ期待しちゃうじゃないですか。

別にセックスとかじゃなくてもいいから、とにかくどんな形でもいいから、誰に感情移入したらいいか教えてくれ!
映画よ、勝手に進まないでくれ!
八月ちゃんかわいい!

最後まで3バンドに踏み込み切れない岩淵さんを観て、もしかしたら岩淵さん自身、彼らのモッシュピットに入り込めていないんじゃないかと思ってしまうほど、ものすごく歯がゆい。


最近、鶴岡キャノンボールの鶴岡法斎さんとつるむようになりました。
僕のさい子ちゃんに対するコラムを読んだ鶴岡さんが、Twitterでリプを送ってくれたのがきっかけです。

これまで二回くらい飲んだんですけど、超楽しくて、この映画への悪口もいっぱい言って、それでなんか虚しくなりました。

俺は、岩淵さんが羨ましくてしょうがないんですよ。
なんかかっけえし、心の底から羨ましいんですよ。

だって自分の作品色んな人に感想書いてもらって、面白い面白くないの評価をしてもらってるわけじゃん。
俺なんかほとんどもらったことないよ。
映画も作っちゃってさ。
そんでその映画に俺もこんなにモヤモヤさせられてさ。
ほんと、ずるいわ。
いや、ずるくないんだけど。

鶴岡さんにそういう話をしたら
「めんどくさいなあ」
「ほんと生きるの下手だね」
「ひらのって苗字にろくな人はいないな」
とたくさん暴言を吐かれました。

まだ未来ある僕のような若者を潰そうとしているようです。

そろそろ夏ですね。
あ、八月ちゃん。
平野大地 プロフィール

1992年12月5日生まれ。
現在無職。
「テレクラキャノンボール上映会@日芸」の主催者。

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