あれからずっと熱っぽい vol.2
2016-01-21
コラムニスト:平野大地
あけましておめでとうございます。
2016年、未だに仕事が始まらない無職の平野です。

突然ですが、僕には大学四年間、そして社会人になってからも自分をひたすら支え続けてくれている女の子がいます。

彼女と初めて出逢ったのは、僕が大学1年生のとき。

童貞のまま卒業するという不本意な高校生活を終えた春休み、「大学に入れば女の子の股が緩み、誰とでもセックスできる」という間違った知識をネットで鵜呑みにした僕は、これから訪れるであろう華やかな性生活を想像し、岡村ちゃんを聴いたり、村上春樹を読んだり、そしてAVを見たりして、セックスのイメトレをしていました。

「ふむふむ、言葉責めはこうやるのか」
「ヴ、ヴァギナ…?

「えっ?! 女の子って穴3つあんの!?」
というように僕はメキメキと知識を蓄え、前のめりで大学生活の準備をしていたわけですが、そのスタートダッシュで盛大にこけます。

新歓でのいわゆる大学生ノリに付いていけず、先輩からのイッキ依頼を「あ、いや、む、むりっす」と拒否。
さらにはほとんどまともに女の子と話せず、慣れない酒を飲みまくり覚えたての性知識披露でドン引きさせ、最後には吐き散らかし、段々同級生とは距離が生まれ、典型的な“大学ボッチ”生活を開始。
やり場のない性欲をAVによって発散するという毎日を送っていました。
いま思えば性の知識じゃなく、コミュニケーションの取り方を学んでおくべきでした……。

そんな生活が続いて、しばらく経ったある日。
いつものように動画を漁っていると、数ある動画アイコンの中に彼女を見つけ、僕は一瞬で心を奪われました。

立ちくらみがするほど白く輝く肌に、神に愛されたかのような美しいおっぱい。
童貞の夢と希望が詰まった大きいお尻。
耳を愛撫するようなかわいらしい声。
ゆとりを体現したようなその甘い表情。

そんな天使みたいな彼女が画面の向こうでちんちんしゃぶって挿れられて喘いでいる。
死ぬほどヌキました。

彼女の名前は上原亜衣。
以来、ものすごくお世話になっております。
僕が性犯罪者にならずこうしてシャバの空気が吸えているのは、彼女のおかげといっても過言ではありません。

僕のありあまる性欲と寂しさを受け止め、人間関係がうまくいかないときも、就活で辛いときも、親と喧嘩したときも、上司に怒られたときも、彼女は変わらず画面の向こうで僕に優しく語りかけてくれました。
「気持ちいい?」


しかし昨年11月、退職を決めた僕のもとに突然飛び込んで来た「上原亜衣 引退
のニュース。
AV女優の裏側リポート かたりたがーる 上原亜衣』を観た矢先の出来事。
この作品を観ていて、僕はまだ亜衣ちゃんはしばらく続けるんだろうなと勝手に思っていたので、かなりショックを受けました。

梁井さんが監督を務める『かたりたがーる』シリーズ。
女優さんへのインタビューを中心に進んでいくこの作品は、まさにHMJMらしいドキュメンタリーAVで、ファンの方も多くいるのではないでしょうか。
かくいう僕も大ファンで、全作観ています。

中でも亜衣ちゃんの『かたりたがーる』は、シリーズの中で僕が特に好きな作品です。
もちろん亜衣ちゃんが好きという色眼鏡も入っていますが、それだけじゃなく、彼女のキャリアの軌跡を辿る、ある種ロードムービー的な構成にも魅かれています。

上原亜衣ちゃんにとって今作は二度目のハマジム作品出演、前作の彼女はまだ19歳。
ギャルっぽさ、あどけなさの抜けない、いかにも素人っぽい女の子でした。

本作はそのときの映像を交え、デビューしたての亜衣ちゃんといまの亜衣ちゃんをオーバーラップさせながら、トップ女優に上り詰めた彼女の今を映し、現在の仕事の環境や自身の心境の変化について語っていきます。
本当にハツラツと、楽しみながら。

けれども引退を表明したいま、僕が思い出すのは、かわいらしい仕草や気丈な振る舞いの中に、彼女が一瞬だけ見せたあの表情です。

途中のインタビューシーン、お台場でパンケーキを頬張るシーンがあります。
亜衣ちゃんがそのパンケーキの写真をツイッターにアップし、フォロワーからの「亜衣ちゃんと食べてみたい」という反応に喜ぶ彼女を観て、梁井さんが一言。

「上原さん、そういうのにちょっと触れてないのかなって、ちょっと思った」

数々の賞レースを獲得し、トップに君臨する負けなしの上原亜衣。
現場では“できる人”として呼ばれ、高いクオリティーを期待され、それに応え続けている。

梁井さんの言葉を受けて亜衣ちゃんは、ほんの一瞬だけ、怖いような、哀しいような、何とも言えない目をします。
でもすぐにまたハツラツとした亜衣ちゃんに戻ります。

普通の人だったら少しここで甘えて、自分がいかに孤独か、というのを語ったり、慰めてもらいたいと思うんですが、彼女は孤独だと認めつつ、最近はそんなことない、というようなことを言って、笑顔で応える。

「これが上原亜衣なんだな」
と思いました。
本当の裏側を絶対に見せない。
だからこそ、ほんの一瞬のあの目が、なんだか焼き付いてしまいました。

作品の最後、亜衣ちゃんが梁井さんに尋ねます。
「なんで最初(私を)撮ろうと思ったんですか?」
梁井さんは応えます。
「なんか単純に素人っぽかったから」
「じゃあ」と亜衣ちゃんは再び尋ねます。
「じゃあ、今は?」

その先は、みなさんの目で観て確かめてみてください。

亜衣ちゃんは凄い。
でも天才とか、そういう常人離れした印象はありません。
昔の彼女のインタビューで「おじさんとヤルときは目をつぶってる」というのを聞いて、ああ、この子は普通の女の子なんだな、というのを感じました。
セックスがめちゃくちゃ狂ったように好きなわけじゃない。

「負けず嫌いなんです」と彼女は自分のことを表現しています。
始めはそんなに熱心じゃなかったこの仕事にのめり込むようになったのは、彼女より遅れて事務所に入って来た女の子への競争心が芽生えてからだそうです。

そんな亜衣ちゃんの引退の理由は「目標がなくなったから」。
負けず嫌いだけれど、だからこそ勝ち続けるのは面白くない。
彼女はきっとずっとてっぺんにいるのではなく、誰かを追い越したいという思いで走り続けてきたような、そんな印象も受けました。

同時に彼女はある意味で、自分に負けそうになっていたんじゃないか。
自分のマイナス面を表に出すまいとしているのは、それをやってしまうと自分に負けてしまうと感じているからなんじゃないだろうか。
その寂しさや孤独がピークに達して、隠しきれなくなってきたのも一つの理由なんじゃないか。
引退表明直前に撮影された『かたりたがーる』は、その彼女の柔らかくてデリケートな部分をしっかりと捉えています。

亜衣ちゃんがいままで僕に与えてくれたのは、エロだけではありません。
もちろん始めは亜衣ちゃんがどんな人なのか、そこまでよく知りませんでした。
でも画面の向こうで激しく喘ぐ彼女に、何かを感じていたのは確かです。

そして有名になるにつれ、彼女が自分の言葉で語っている姿を観るようになります。
仕事への姿勢とか、根性とか、気遣いとか、そういう目に見えない彼女の姿勢を知り、刺激され、僕は彼女をひとりの人間として尊敬するようになっていました。

僕と亜衣ちゃんは同い年。
たぶん彼女は僕の世代で最も早くデビューしたAV女優。
それから5年が経ったいま、業界トップを勝ち取り、すべてをやり切ってその女優人生に幕を引きます。

本当におつかれさま。
ありがとうございました。
幸せになってね。


先日、ある会社から内定をもらいました。
Webサイトの運営をしている会社です。
運営メディアの記事作成や、アクセス解析、Web広告のマーケティングなどの仕事を任せてもらえるようです。
そしてもう一つ、前回書いた最終面接を受けた会社の返事を待っています。
そのどちらかに行こうと思っています。

渡辺和子さんという方が書かれた「置かれた場所で咲きなさい」という本があります。
いまあなたのいる場所があなたの居場所、だからそこで根を下ろし努力して花を咲かせるべき、大筋としてそういったことが書かれている自己啓発本です。

実は大学一年生の頃に僕が通っていたのは、日芸ではない別な大学でした。
ボッチのまま僕はこの大学を逃げるように退学し、日芸に入学。
ボッチがボッチなりに群れを作ることができる環境に身を置くことで、楽しい学生生活を送ることができるようになりました。

そういう過去もあって「置かれた場所が自分の場所とかふざけんな」「人間には足があるんだから行きたいところへ行きゃあいい」「なんで全部受け身になんなきゃいけないんだ」という風にこの本に対して少なからず嫌悪を感じていました。

でも置かれた場所で咲き、そして華々しく去る彼女を観ました。
だから、未だに僕はこの本の内容を全部受け入れることはできないけれど、一理ある、とは思っています。

次の職場、長く続けようと思います。
亜衣ちゃんほど大きなものじゃなくても、せめて一輪でも花を咲かせるまで。
平野大地 プロフィール

1992年12月5日生まれ。
現在無職。
「テレクラキャノンボール上映会@日芸」の主催者。

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