ひらの通信 VOL.17
2018-02-19
コラムニスト:平野勝之
「劇場版アイドルキャノンボール2017」について。思った事。

正直、期待してた。
去年、編集の早い段階から、カンパニー松尾から直々に自信満々な言葉を聞かされていたからだ。
「とんでもない展開になった。テレキャノより面白いかも」
できあがったばかりの時、ポスターも見た。
アイドル vs AV監督!

すでにBISキャノで玉砕しているはずなのに、再度挑戦している。

以上の情報で期待するな、という方が無理だろう。

初日にお誘いを受けて絶賛する気まんまんで出かけた。
なんてったって大好きなカンパニー松尾だし、大好きなテレクラキャノンボール2013もあるし、その後も自分の中では一連のみのるちゃんの501が面白かったからだし、もちろん大切な仲間である、ハマジムの姿勢だって絶賛しているからだ。

結論から言うと、その気持ちは今回は粉々に打ち砕かれてしまった。

自分の場合、たとえハマジムとは言え、映画を見るときは、まっさらな頭で見るようにしている。
単純に「映画」を楽しもうとしている。
若干、通常よりも「制作者」としての視点はあり、なあなあで見るつもりは無い。
そういう甘さの方がよくないと思っている。
当然、自分も言われる立場であるのは覚悟の上だ。

さて、問題の「アイドルキャノンボール」である。
最初のあたりから、嫌な予感がした。

これって内輪ウケの馬鹿騒ぎじゃない?って雰囲気が漂っているように感じた。
自分がかなり醒めて見てるせいか?とも思ったが、途中の会議の様子にも人数が多すぎるせいか、それぞれのキャラクターが薄まっていて中心部がハッキリせず、ただ男子校的にうるさく騒いでる雰囲気の方が勝ってしまっている風に見えた。
カンパニー松尾本人も懸念していたルールのわかりづらさも手伝って、しかも、アイドルも人数が多すぎて、それぞれのキャラクターが浮上してこないのだ。
簡単に言うと、結果、お話としては「全滅」である。

僕はね「映画」ってのは不可能を可能にするものだ、と思っている。
この場合、お客さんが期待するのは、アイドルが悪戦苦闘の果てに、AV監督に誰か食われるか?はたまた、大恋愛の果てにゴールインするなり、夜逃げするなりじゃないわけ?
たとえうまくいかなかったにしても想像を超える逸脱を見せるのが「映画」じゃないの?

勝手な期待だったかもしれないけど、僕みたいにアイドルに一切興味ない人間でも、うわー、○○ちゃん、なんて素敵なんだろー?とか、うわあああ、やったぜ、岩淵!とか思いたいわけじゃないか?

ネタはバラせないけど、岩淵は確かに面白かったし、共感も抱かれるでしょう、しかしだね、オレからすると「この程度かよ?」としか言いようがないわけですよ。
やったのはいいけど、もうすでに偉大な先人たちはテレキャノでやってるし、他の連中やオレだってやってんだよう。それを泣いてなぞってどうすんだ?
何やってんだ?おまえ。

馬鹿じゃねーの?

仲間に入りたいって必死なのは伝わるし熱意は素晴らしいけど、ちょっと違う気がする。

この場合の役割は女房すっとばして、もう一回アイドルとセックスするために
突撃する事だろ?その意志見せなきゃ。
この場合、目的はただ一つでしかないんだよ。
こんなこと言うと岩淵がかわいそうだけど、自分の女房ったって、確かに面白いけど、そんなの吹き飛ばすぐらい孤独にならないといかんですよ。
やりたい事やりたいから一緒になるったって、女が理解するわけないじゃないか。

孤独になれや。

山ちゃんは一人奮闘してて、勝つ事しか考えてないのが唯一の救いで、さすが頭が良くて面白いんだけど。

いくらなんでもハードルが高すぎるのはあると思う。
しかし、お客さんは非情だ。
どんな痛快な事が待っているのか?期待するわけです。

どうも、そこでの落とし前の付け方が小さい気がする。

いや、一般的にはそういう問題ではなく、オレが「この程度」と思ってる共感の方がいいのだろうか?とも考える。
そうなんだろうか?本当に?
自分の考えてる事が異常すぎるのか?とも思うが、しかし、これは自分の中では「映画」のイメージではない。

映画の中でカンパニー松尾もハッキリ「負けだ」と言ってて、そのあたりはいつもの潔さは感じて納得はする。

エリザベス宮地は一体何をやってたんだ?(笑)
なんだありゃ?
なんか、遊園地でイチャイチャしてるだけで、クソ面白くもなんともないじゃないか。
なんだこれは?こんなんで泣かれちゃ困るんだよぅ。
やることやってから泣いてくれよ。そういう意味ではまだ岩淵の方がマシだ。

これはやはり誰かがゲーム終わっても食い下がって、アイドルを誰か一人、真正面から打ち砕くまで終われないんじゃないの?

アイドルだって、出てくるやつ全員面白くない。

だから、やっぱ今回は悪い意味で男子校ノリに終始してた気がする。

そりゃそれぞれのキャラクターが大好きで許したり認めたり面白がったりする人はいるでしょうよ、でもね、オレは納得できない。

100歩譲っても、シリーズの中の1本で、こんな形もありました、みたいに楽しむならいいでしょう。
その素早い機動力はすごく良いと思うわけです。
あるいはファンだけに向けてのサービスなら、これまた「あり」だと思う。

しかし、一歩「映画」という広大な土地から見た場合、どうだろう?

すでにその役割は「テレクラキャノンボール2013」で終えている。
テレキャノの場合、良かったのは「映画」や劇場の事などこれっぽっちも考えていない強さがあって、その潔さが得がたい魅力になっていて素晴らしいと思った。「501」の8時間版も、普通では考えられない映像の荒野をみのる一人があてどもなくさまよってる孤独っぷりが方法としつこさと相まって素晴らしいものがあった。

同じような題材で、今回はさらにハードルが上がっているわけで、よほど考えて挑まないと難しいんじゃ?と思う。

しかし、考えて挑んでもなぁ・・と心中複雑だ。

とにかく、昔のアメリカ映画の「白熱」って映画のラストに粋なセリフで
「この馬鹿、やっちまいやがった」
ってのがあるんだけど、そういうのが見たいわけです。

僕は贅沢なの?
みんなこのぐらいで楽しめるの?

今回はじっと考えてそう思ってしまった。

自分にも向けても言ってる事だけどね。

平野勝之
平野勝之プロフィール

1964年生まれ。静岡県出身。映画監督。

アマチュア時代より8mmを中心とした映像作品を撮り続け、PFF等で高く評価される。
プロデビュー作はAV「由美香の発情期」。その後、「水戸拷問」「ザ・タブー」といった、ヌケないがひたすらに面白い傑作AVを数多く監督する。
1997年に女優・林由美香との北海道自転車旅行を記録した「由美香」が劇場公開され大ヒット。
その後も自転車旅行を題材とした「自転車三部作」を作り、厳冬期の北海道を自ら走って撮影した「白 THE WHITE」をベルリン国際映画祭に出品している。
2011年11年ぶりの新作「監督失格」を劇場公開する。

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