ひらの通信 VOL.7
2016-02-03
コラムニスト:平野勝之
フィルム・ノワール?

フィルム・ノワールとは、フランスでいう暗黒街映画、まあアメリカのギャング映画、日本のヤクザ映画と同じですね。

フランスのヤクザ映画、フィルム・ノワールも昔、好きでよく見ていた。

元々ギャング映画は好きなのでフランスものだけじゃなく、いろいろ見た。

古いものではやっぱりハワードホークスやジョンヒューストン、ラオールウォルシュなど、やっぱアメリカの古いものに痺れるものが多く、好きだった。

中でもハワードホークス「暗黒街の顔役」「脱出」「三つ数えろ」ジョンヒューストン「アスファルトジャングル」「黄金」オーソンウェルズ「黒い罠」キューブリック「現金に体を張れ」などが好きで、オーソンウェルズ&キューブリックは別格としても、特に「暗黒街の顔役」は最高だった。

当時、20代ぐらいの僕は、日本の小津、溝口、成瀬などの和食は見向きもしないで、主にアメリカの古いものから新しいものまで、ギャング、犯罪ものばっかり見ていた。70年代ぐらいのアメリカ映画にも好きなのは山のようにあって、ドンシーゲルやらペキンパーやらフリードキンやらピーターイェーツやら何から書いていいかわからないほど好物が多い。

恋愛映画とか、アート映画、ドキュメンタリー、自主映画などは、ほとんど興味がなく、見てもヨダレたらして寝たりするので、あんまり見ていない。。まあ、お子様味覚なのでしょう。

深作とかの「仁義なき戦い」とかは、嫌いじゃないけど、特に夢中になる事はなかった。
でも「ゴッドファーザー」は嫌いだった。フセインがこの映画が好きだったらしい。
映画はファンタジーであるべきだけど、許せるファンタジーと許せないファンタジーがある。自分にとって「ゴッドファーザー」は許せるファンタジーではなかった。


先のハワードホークス「暗黒街の顔役」は「ゴッドファーザー」とは対極の映画だ。

「暗黒街の顔役」は1932年の映画で、1920年代の実在ギャングの大物、アル・カポネの話で、デ・パルマが80年代にアル・パチーノ主演で「スカーフェイス」としてリメイクしている。
僕は「スカーフェイス」も好きだけど、圧倒的にハワードホークスのオリジナルの方が好きだ。


「ゴッドファーザー」がマフィアを神格化しようとしているのに対し「暗黒街の顔役」のギャングたちは、徹底的にガキや動物のように描かれていて、殺されるギャングもなりふりかまわず、みっともなく命拾いするし、それをさらになりふりかまわず射殺するギャングは、ほとんど動物だ。


まずこの視点にハワードホークスの優れた映画的資質が見える。
キューブリック「現金に体を張れ」も同様の視点が見え隠れしている。


「暗黒街の顔役」で、最もこの映画らしいシーンは、僕の鑑賞映画史上、名シーンリストの中でも断トツの上位なのだ。


そのシーンは、ちょうどマシンガンが開発されたばかりの時代で、映画の中のギャングたちは、大興奮しながら初めて手にするマシンガンでキャッキャッとやっている。
とにかくみんな目的もなく、マシンガンを撃ちたくて仕方がない。

今からこれを持って敵を襲撃に行くのだ!!とか、ほとんど子供みたいに盛り上っている。
そこへボスがやって来て、「とんでもない話だ、そんな事をしたら、こっちの立場が危ない、やめろ」と、みんなを止めに入るが、ギャングの若頭(主役のアル、カポネ役)がボスに向かって「うるせぇ!!」「命令するのはおまえじゃない」
そう言うと、
「命令するのはこいつだ!!」と言って、マシンガンをポンとやると、カメラに向かって、バリバリバリバリ!!とぶっ放すのだ。


このシーンを見た時、僕は痺れまくって卒倒しそうになった(笑)

いやあぁ〜、いいですね。

こんな名シーンを一生に一度は作ってみたいもんだわさ。

推測なんだけど「セーラー服と機関銃」の「快感…」は、これのパクリなんじゃないかなぁ?

「暗黒街の顔役」のこのシーンと「セーラー服と機関銃」との関連はどうなんだろ?「セーラー服〜」の原作にこういうシーンがあるのかな?

まあ、「セーラー服〜」でいくら薬師丸が「快感…」って言ったって「暗黒街〜」の映画的快感に勝てるわけがない。

ハワードホークス、恐るべし。
ハワードホークスという監督は、キメるときはホントにキメる。

「脱出」で、ホーギーカーマイケルがいきなりピアノで「香港ブルース」を歌い出す瞬間とか、「3つ数えろ」で見せた、畳み掛けるようなラストシーンとか。

なんだかえらく僕のツボにハマる。

あー…
フランスのフィルム・ノワールについて書くつもりが、いつのまにかハワードホークスになっちゃった。

フィルムノワールと言えば、なんと言ってもJ・P・メルヴィルでしょう。

次はメルヴィル+アランドロン様の一大傑作「仁義」について。


※デヴィッドボウイが死んだ。一番好きな「ASHES TO ASHES」と「SOUL LOVE」の2曲を聴く。


ひらの
平野勝之プロフィール

1964年生まれ。静岡県出身。映画監督。

アマチュア時代より8mmを中心とした映像作品を撮り続け、PFF等で高く評価される。
プロデビュー作はAV「由美香の発情期」。その後、「水戸拷問」「ザ・タブー」といった、ヌケないがひたすらに面白い傑作AVを数多く監督する。
1997年に女優・林由美香との北海道自転車旅行を記録した「由美香」が劇場公開され大ヒット。
その後も自転車旅行を題材とした「自転車三部作」を作り、厳冬期の北海道を自ら走って撮影した「白 THE WHITE」をベルリン国際映画祭に出品している。
2011年11年ぶりの新作「監督失格」を劇場公開する。

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