山口雅のやさしい味噌カツ vol.31
2018-10-19
コラムニスト:山口雅
今月末、カンパニー松尾監督の特集上映が名古屋で行われます。
2日間にわたり、いくつかの一般作やAVを上映します。会場は映画館、お一人様や女性でも行きやすいのではと思います。そんな上映を企画しました。お近くの方、よかったら遊びにきてください。
で、この場を借りて、その内容と各作品についての個人的感想をお伝えしてみます。早い話が宣伝です。お付き合いくだされば幸いです。

●『メイキング オブ アイドルキャノンボール』

昨年春のWACKアイドルオーディション・ドキュメンタリーにまつわるメイキング。「劇場版」やら「裏」やら、もう何が何だか分かりません。しかも長い! 見る側も5時間15分の耐久レース。でもアイドル側も監督陣含め仕掛け人側も、いろんな人のいろんな思いが映り込んでおり、関連作の中では私はコレが一番面白かったです。劇場版とは印象が全く変わってしまう人も複数。つくづく編集って恐ろしい。



●『ドキュメントONOHOLO』

おやすみホログラム×写真家・小野麻早の撮影現場ドキュメント。謎の組み合わせにも思える企画を実現した写真集のメイキングです。
コレを見た後、小野さんの写真集をKindle版で購入してみました。25年間にわたる写真をランダムに配置したというその写真集は、とてもじゃないが心が休まるものではなく、ページを送るのが怖かった。愛憎の入り混じり方が強烈です。息子が母親に抱く思いは、娘の父親に対するそれとは多分、大きく違う。息が苦しくなりました。



●『大橋仁 そこにすわろうとおもう メイキング』

500人の男女が交わり合う大橋仁さんによる写真集のメイキング。行われていることは明らかに異常なことで、非日常すぎる光景が広がります。そして撮影後、それぞれが何事もなかったように街へと溶け込んでいく姿に、自分にも心当たりがあると思いました。狂気の熱に満たされた場所から社会に戻っていく時の、足元がふらつくあの感覚。
3年前にも上映を企画しましたが、クリスマスということで直前にプログラムを変更。幻の企画となっており、今回が名古屋初上映です。レアものです。



●『YOGA』

数年前に『YOGA』の感想を書いたことがあります。AVを少しずつ見始め、自分の視点に全く自信がないまま「ものすごく的外れなことを書いているかもしれない」と、おそるおそる出した文章でした。
今回上映トークゲストをお願いした松江哲明監督が当時それにコメントをくださいました。「松尾さんって確かにこんな感じ」という、私には思いがけない言葉で驚きました。松尾監督と付き合いが長くAVの現場にも身を置いていた松江さんの一言に、なんだかすごく安心したのを覚えています。

私は今もAVがよく分かりません。分からないけれど、また上映をします。
だいぶ恥ずかしいですが、その時に書いた『YOGA』の感想はこんなのでした。これから見る方は斜め読みで。上映に来ない方も、ぜひ一度本作をご観賞ください。
そういえば先日ウォン・カーウァイの映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』を見たら完全なるパクリ…ではなくオマージュ箇所があって、笑いました。

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『YOGA』、「外が見えないくらい汚れた列車の窓と、その窓から外ばかり見ている男の人のお話」です。

松尾監督と飛鳥さんという女優さんの、インドへの旅。飛鳥さんはヨガのインストラクターで、ヨガは生き方そのものだと語ります。冒頭、裸で行う彼女のヨガが本当に綺麗。

カレーばかりに目を輝かせる松尾監督は、インドの街をいっぱい撮ってます。飛鳥さんのことはあんまり見てません。ひたすらカレーを食べ、カレーの説明を入れ、彼女が煙草を吸わないからと屋上や小窓から1人で一服する場面ばっかり。
有名大学を首席で卒業し、将来は貧しい子どもの里親になって社会貢献したいと話すキチンとした彼女が、インドの喧騒を「苦手〜」と言ったり、ホテルの部屋で几帳面に虫よけミストをまいたりするような所ばっかり出てきます。
旅自体も彼女がヨガを学ぶための別行動が多いようですが、せっかく屋上で花火を一緒に見ても、映るのは犬が走ってく姿。飛鳥さんが気の毒になるくらい意地悪な編集だと思います。「インドにいつかまた来たい、その時は1人で」って、だめ押しのテロップまで入っちゃいます。もういいよ分かったから!って感じです。
もちろん飛鳥さんの美しいヨガシーンやセックスもありますが、ラストには長い長い車窓シーン。印象的な松尾さんの「目」。で、一番最後に、種明かしのように彼女との歯車のずれが語られ、あるメッセージのようなテロップがあります。「うん、そうだね」って思うけど。思うけど!

でもね、これ嫌いじゃないんです私。むしろ相当好きです。
実はこの作品、1年ほど前に上映版を見ています。私が『劇場版テレキャノ2013』以外で、ほんっとに初めて!見たカンパニー松尾作品でした。
その時は続けて『私を女優にして下さいAGAIN11』も見ました。その夜の帰り道、ひとりで歩きながら思っていたのは「カンパニー松尾さんの作品て、どっか遠い知らない国を旅してる男の人からたまーに届く絵葉書みたいだな〜」ってことでした。綺麗な写真の裏面に「寂しい、帰りたい、寂しい」って書いてあるから、こっちもちょっと感傷的になって「そんなに寂しいなら、帰ってきたらいいよ!」って返事を出す。でも実際は本人は帰る気ゼロで、言ってるだけ。そんな感じ。
その後、他の作品を見てもやっぱり基本そんな印象で、なんか腹立つけど仕方ないし、まーいいよじゃあ好きにしなよ、帰りたくなったら帰ればいーしね、って気持ちにさせられる。

本当に日々いろんなことが起こるけど、今これを見たのは正解です。個人的に、気分的に。



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カンパニー松尾の世界@名古屋シネマスコーレ
10/25木『メイキング オブ アイドルキャノンボール』
10/26金『ドキュメント ONOHOLO』『大橋仁 そこにすわろうとおもうメイキング』『YOGA』
予約:https://ameblo.jp/rengousekigun/entry-12410462218.html

山口雅プロフィール

名古屋市在住、会社員。

世界の片隅でタウン誌や映画誌の編集をしています。

2014年6月「テレキャノ名古屋非公式BOOK」をきっかけに、『劇場版テレクラキャノンボール2013』Blue-ray特典ガイドブックを取材編集。
名古屋の自主上映主催は2014年12月「アラウンド・ザ・テレキャノ」「テレキャノ英語版」「バクシーシ山下の社会科見学」「劇場版 どついたるねんライブ」「カンパニー松尾の世界」など。
非公式BOOKも上映のたびに作り続けてます。

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