山口雅のやさしい味噌カツ vol.30
2018-07-04
コラムニスト:山口雅
6月29日にロフトプラスワンで開催されたバクシーシ山下監督の新作『名器完成』上映会。
当日はカンパニー松尾監督53回目のお誕生日でもありました。
今回は、お二人のトークの一部をレポートの形でお届けします。



190分を120分にした上映版『名器完成 天川涼羽』。
AV女優として再起を図る天川さんが、性器整形手術に臨むドキュメントAVです。
バク山監督の過去作品で整形手術といえば『全裸のランチ』なども思い起こされます。『名器〜』もエグい内容なのかと思いきや意外とゆるく、楽しく観賞しました。
男優さん、スタッフ、お医者さんに至るまで、登場する男性陣のキャラクターがみんな可愛らしくて面白い。女優さんを中心に進んでいるのに、ついそちらに目が行ってしまいます。
現場で起きる数多くのトラブルも、結果的にすべて笑える要素になってるんですよね。何事にもトラブルはつきもの。その対応や受け止め方にこそ人間力が出るわけで、強いことだなあと思います。
かといって山下さんがテキパキ迅速にトラブル対応してる様子も、特にない。「なんか知らんが自然に場がそうなっていってる」感じが本当に良いですね。山下さんのAVには、いつもそんな印象を受けます。
ひとつ私が気になったのは、6年ほど効果が続くというこの手術。具体的には、膣内を狭くするというものです。コレ、もしもその間に出産の機会が彼女に訪れた場合、影響はないんですかね? いわゆる「AVっぽいAV」では全然ない作品ですが、当事者である女優さんも含め、全員が男性視点のみで寄っていくのが、なんだか非常にAVっぽいなあと思いました。

はい、お待たせしました。カンパニー松尾さん&バクシーシ山下さんの『名器完成』トークレポです。



― 53歳を迎えた松尾さんと山下さんの寄る年波トーク ―

山 カンパニー松尾さん、53歳の誕生日おめでとうございます!
松 …何だっけ。何言おうとしたか忘れちゃった。
山 こんな感じで53歳。だんだん年相応になってくるね。
松 一日の中でできることがだんだん少なくなってきたね。
山 俺も物忘れは激しいよ。自分の電話番号とか忘れちゃうんだよね。実家の郵便番号も忘れます。今日も忘れてたしね。
松 山ちゃんは撮影中、目も面白いよね。普段かけてる眼鏡は近視ですよね?
山 そう、近視。老眼でモニターが見えないから老眼鏡を首から下げてる。
松 眼鏡かけてる人が、首から眼鏡をかけて撮影してるんですよ(笑)。
山 非常にややこしい。
松 近眼、老眼、ノーマルの裸眼ってこと。
山 もう一つあるの。遠近じゃなく、少し先の手元がよく見える中近というのもある。撮影には中近眼鏡がいいなーと。裸眼だと何にもできないんだよね。
松 二つも眼鏡があるのに眼鏡を上にずらして、結局裸眼で見てる(笑)。
山 うん。目は本当に激しいです。
松 僕も最近、iPhoneを見る時に読みづらいんです。文字を大きくしたりね。
山 ハズキルーペは買った? 誕生プレゼントでもらった?
松 いや、もらってないけど。それ何だっけ?
山 拡大鏡。菊川怜が上に座っても壊れないの。
松 何か聞いたことある。この前も、バイク雑誌を買ったら読めないの。
山 渡辺謙も言ってた。「新聞が読めないっ!」って。(注:ハズキルーペのCMの話らしい)
松 お洒落な雑誌も全然読めない。AV撮影もそんな感じですよ。
山 ピントも合ってないかもしれない。結構ボケてるとこがあるんだよね。
松 あるある。モニターが離れたところに付いてるから。
山 大変なんです。
松 そんな我々です。この年でこういう仕事がいただけてるのは幸せですよね。普通はもうそろそろ辞めろって言われるもんね。
山 そうですね。でも年齢はあんまり気にしないでしょ?
松 普段は忘れてますよ。
山 自分が何歳か分かんないでしょ? 学生の役をやったりしてるしね。「マツオくーん」みたいな。
松 いや、もうやってないよ! 流石にここ4、5年は止めてます。
山 女教師モノは止めてるの?
松 女教師モノ、家庭教師モノね。もう先生になってるの。何年か前に「生徒役は無理だ」と編集しながら分かった。40代半ばまでは生徒でしたよ。やっぱりしんどいですよね。
山 50代らしくね。一番大事なチンポ力はどうですか?
松 年々落ちてる。今は撮影で頑張るために普段何もしないです。いじらない、触らない。
山 「ハンド!反則!」みたいな。
松 なるべく触らないようにしてます。温存。日本代表です。
山 じゃ、撮影の時しかしないの?
松 しない。自分のところの撮影で勃たないのはまだいいけど、男優で呼ばれることが時々あって。こないだも呼んでもらったんだけど、前日オナニーしちゃったんですよ。
山 なんで? 撮影があるのは知ってたのに?
松 いけるだろうと思って。オナニーした方が調子良い時もあったわけですよ。一発抜いたくらいがちょうどいい。
山 そうね、若い頃はね。
松 行ったら、ピクリともしなくなっちゃって。
山 大の大人が「すいません、昨日オナニーしちゃいました」(笑)。
松 言い訳にならない。現場も若い人たちばっかりで。
山 「松尾先生〜」みたいな感じなんだ。
松 若い男優なら監督も「勃たせてよ」とか言えるけど、俺には言いづらそうで。そんなことがあったので、これからはしないと決めました。

― 撮影に参加した岩淵弘樹さんを交えて撮影の振り返り ―

山 久々の撮影現場でしたね。
松 本当に、久々に山下さんらしい現場でね。
山 遠ざかって久しいですから。スピルバーグより撮ってないです。あいつの方が働いてます。
松 貴重ですね。現場の勘は鈍ってなかったですね。なんで山下さんの現場はこういう小さいトラブルが積み重なるんだろう。まあ、テンポは緩やかです。でも山下テイスト溢れる快作になっているんじゃないかと思います(笑)。
山 限られた条件の中で。
松 最初からキタさんが舞い上がってしまってたね。
山 俺の人選ミス(笑)。もう少し冷静な判断がある人かと思ったんだけど。
松 でも「これから手術する」って話は振ってあるわけでしょ?。
山 そうです。キタさんは、年齢的にも61歳ですからね。(会場「えー」)
松 あの人は、また別のベクトルですごいんですよ。
山 もう少し分別のある大人かと思ったら意外と流される人だった(笑)。でも正直で、忖度しない人なの。キタさんみたいな人でちょうど良かったのかな。
松 僕はキタさんが好きだから面白いけどね。病院でのやりとりとかもね。
山 本田先生に会えるとは思ってなかったですね。
松 有名な方ですからね、いろんな意味で。先生があそこまで乗ってくれると思わなかったね。手術だけして「ハイ、終わり」というのもあるから。
山 うん。心の広い先生でしたね。すごく突っ込んでくれるし。
松 「俺もヤリたい」とかね(笑)。
山 どう対処していいか分からないよね(笑)。病院の中だし「映像でここは使うな」という部分もあるわけですよ。「俺もヤリたい」は使っていいですか?と聞いたら「それはいい」と(笑)。いい先生です。
松 なぜか本田先生の次に映り込みが激しいのが、岩淵さん。
山 見切れまくってた。
岩 初めて山下さんの現場に呼ばれたんですが、後で松尾さんと山下さんにすごく怒られて。撮影方法、カメラの回し方のご指導をすごく受けましたね。
山 AVの撮影をしたことがなかったんですよね。ずーっと本田先生の横で見切れてて「コイツ、いつ気づくかな」と思いながら。
松 ぶっさんは音楽モノとかテレビのドキュメンタリーもやってるけど、一人で撮影することが多いソロプレイヤーなんです。「バンドができなかったんだ!」と、この撮影で初めて分かりました。
山 自分のギターしか弾かない。
松 具体的にいうと、岩淵さんはすごく至近距離で撮ってカメラに映り込んじゃう。本当は2カメの時はお互いのカメラにお互いが映らないよう、目配せして気配を感じながら「あの人はこっちを撮ってるな。じゃ俺はあっちを撮ろう」とやる。それが通常の撮影。
山 3Pで、女の子が四つん這いになってて俺がおしり側から撮ってて、フェラになる時に岩淵に「撮れ」と言ったら、自分が寄っていっちゃうの(笑)。
松 山下のカメラに映り込まない場所で寸止めしなきゃいけない。
山 男優の顔よりチンポに近い(笑)。女の子の顔と同じ幅まで寄せてくる。
岩 会社で山下さんが僕の後ろで編集してたんですけど、「チッ、何だよ!」とずっと舌打ちが聞こえてきて、そのたびに「やべー」ってビクビクしてました。
松 山ちゃんはヘッドホンしてるから大きな声を出してる意識がないんだけど、聞こえるんだよね(笑)。
岩 山下さんからは何も聞かされないし。松尾さんも黒い布をかぶせられるのは聞いてなかったんですよね?
松 もちろんですよ!(笑) 
山 岩淵さんはすごく見切れるけど、マンコにチンポが入ってる画づくりがすごく上手い。
松 ギターソロだから。
山 ズボズボ入る画ね。
松 お褒めの言葉ですね。
岩 申し訳ない…(笑)。
松 あと、現場で初歩的な僕のミスもありましたね。山下が病院のそばでホテルを取りたいとネットで探してて、「一つしか取れてない。もう一部屋取りたい」というから僕がホテルの名前も場所も聞いていろいろ見て「あれ、空いてるよ?」と、予約した。でも実は、そのホテルはその界隈に三軒くらいあったの。
山 最初にメイクしてた部屋で撮れれば、もちろん一部屋で良かったんです。「デリヘルが呼べるホテル情報」みたいなサイトがあって、そのホテルは100%の確率でデリヘルが呼べると書いてあったの。フロントは二階で、エレベーターは一階にある。フロントを通さずに直通で部屋に行ける。これは撮影できるぞと。で、予約した部屋に前日にチェックインしたら、フロントの横の部屋だったの(笑)。十数階建てでいっぱい部屋があるのに。でも松ちゃんがもう一部屋取ってるから、流石にそこも二階ということはないだろうとね。
松 当日「予約したもう一部屋がない」と俺に連絡が来て「えー?」という話になって、確認したら「あ、山ちゃんが取ったホテルと違うホテルを取ってる」と分かった。で、新しいホテルに俺がチェックインして待ってたの。その部屋、日光がまったく入らない。なおかつ部屋の作りが狭すぎて、あんな寿司詰め状態になっちゃった。
岩 あと、映像で説明がないけど、川越シェフですよね。
山 チンポの大きいキタさんと、少し小さめのチンポを一本用意しようとしたんだよね。小さいチンポは誰だろうとキタさんに聞いたら、シェフという男優がいると。川越シェフに似てるから「シェフ」という男優名でやってるホスト。「じゃあホストっぽい格好で来て」と話したんです。今、AV男優は性病検査の検査表がないとダメで、検査項目も増えてるんだよね。シェフが検査で引っかかってしまった。でも前日だったから「しょうがない」と一応置いといたんだけど、その説明をするとややこしくなる。だから、あれで収めといたんです。
岩 飲尿の時に後ろでずっとコールをしてるのに、その説明がない(笑)。
松 「汲んでくれ」と。
山 映像作品なんて、そうでしょう。そういうメタファー。全て説明するんじゃなく、自分で理解する。
松 理解できないよ!(笑)

― 最近のAVをめぐる状況 ―

松 AVもいろいろ変わって来てるね。
山 システム的なことでしょ?
松 だからって『テレキャノ』ができないとかではないんです。素人さんも女優さんも使える。「責任はメーカー自身が持ってくださいね」というだけ。別に何も変わってない。ただ、段取りをちゃんと踏みましょうと。ハマジムも業界内の適正AVの中にいるので約束事が多いだけです。
山 適正AV。よく分からないよね。何を辿ればその情報が見られるわけ? 新聞に載ってるわけでもない。今のAV情報はどこで得ればいいんですか?
松 得たいの?
山 全然知らないから教えてほしいよ。AVがどういう状況なのか分からないんだよ。昔は「ビデオ・ザ・ワールド」とかAV雑誌があったじゃないですか。今はどこを見ればいいんですか?
松 うーん。今は、書いてないかもしれないね。安達かおるさんとか、辻丸さんとかがいろいろやってますよ。
山 そういうのを見ればいいの? ツイッター? 発信する情報にポジション的なものもあるじゃない。一方の情報だけじゃなく、俯瞰で見られる情報がなかなかないんですよ。
松 うんうん。
山 お前で調べろってことなの? AV監督なんだから自分で調べろってこと?
松 でも山ちゃんは監督で、今回現場に行って撮影上の不自由はありました?
山 あんまりないです。
松 そうだよね。ちゃんとSODさんのプロデューサーとかが分かってて、そこのとこは全部やってもらってるんです。だから我々はそういう感じでいいんじゃないですか。監督がルールばかり気にしてると、ルール内で収める話になっちゃう。我々は知らないふりしてやった方が。
山 知らないふりで? 未成年と。
松 それは昔から変わらないじゃん(笑)。駆け引き以前の問題です。新ルールではなく俺たちの頃から、未成年はダメです。
山 殺しとか人のモノを取っちゃダメとか、そういうことさえ守っておけばいいということですね。
松 うん。街の中で裸にしたらダメとかね。昔はやってるメーカーもありましたけど、そういうのはもちろんダメ。
山 ゲリラ的なものはダメ。それは一掃されたんですね。
松 変わらずやっていこうと思いますけどね。「僕らはそんなに困ってはいない」ってことです。


松尾監督は22歳、山下監督は21歳でAV業界入りとのことで、そこから30余年。
これが久しぶりの新作となった山下さんは「時間の流れが速すぎる。まばたきするたびに季節が変わっている」と話されていました。年を取るほどに時間の体感は速まるというけれど、本当にそんな感じかもしれません。
まるっと30年あった平成の時代も、今年で終わりだとか。いろんなことが変わっていきます。でも、まだまだお二人には頑張っていただきたいと、心から。
今年も、夏が始まります。



『名器完成 天川涼羽 AVデビュー』
販売元 SOD、出演者 天川涼羽、発売日2018年6月21日、作品時間190分
https://ec.sod.co.jp/prime/videos/?id=SDMU-839 (外部リンクへ)

山口雅プロフィール

名古屋市在住、会社員。

世界の片隅でタウン誌や映画誌の編集をしています。

2014年6月「テレキャノ名古屋非公式BOOK」をきっかけに、『劇場版テレクラキャノンボール2013』Blue-ray特典ガイドブックを取材編集。
名古屋の自主上映主催は2014年12月「アラウンド・ザ・テレキャノ」「テレキャノ英語版」「バクシーシ山下の社会科見学」「劇場版 どついたるねんライブ」「カンパニー松尾の世界」など。
非公式BOOKも上映のたびに作り続けてます。

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