山口雅のやさしい味噌カツ vol.27
2017-12-15
コラムニスト:山口雅
AVを見るようになって、そろそろ3年近く経ちます。
仕事ではないので趣味で見ているわけですが、未だAVというものがよく分かりません。流れとかシチュエーションとか、表面上のことは分かってきましたが、自分のAVの見方には全く自信がありません。
「自由な見方でいいんだよ」と皆が言いますが、端っこ鑑賞者の感覚で見ています。AVは男のものだから云々という話はいったん置いたとしても、AVの「漠然とした分からない感覚」は、うっすらと続いています。分からない気持ちはモヤモヤした不安を呼び、不安が募ると自己防衛から「全部キライ」の引き出しにまとめて放り込みたくなります。
でもAVをキライになるのもつまらないし、実はキライじゃない。本当はもっと見たい。何かヒントが欲しい時にたまたま梁井さんとお話する機会がありました。

私が抱えている「分からなさ」はいろいろあります。そのひとつが「ハマジムのAVを見るのが時々しんどい問題」。コンディションやタイミングにより、しんどさの波は弱い時も強い時もありますが、コレはわりと慢性的です。
私はろくにAVを見たことないままハマジムに呼んでいただき、彼らと出会いました。ずっとAVの画面を通じて見てきた人たちではなく、たくさん話をしたり聞いたりした人がAV監督だったという感じに近いです。
そんな彼らのセックスを画面で見るのは、なんかいたたまれない。恥ずかしい。正視できない。見てはいけないものを見ている気持ちが拭えない。無理に見ると大変しんどい。そのうち慣れるはずと思ってきましたが、そうでもない。

「迷って迷って再生した挙句、よく10秒で止めている」と梁井さんに話したら、爆笑されました。爆笑されたい。だって変だもの。
他メーカーのAVや、いかにも「ザ・AV」という作品の方が無邪気に見られます。でも運の悪いことに、ハマジムというメーカーは男も女も素の部分を映そうとするドキュメンタリー。かつハメ撮り。「ザ・AV」から離れようとするAVなんですよね。

見たいものが見られない。これは私にとって問題です。今まで「ハマジムのコレが面白い」みたいな文章も書いてきましたが、それは嘘じゃない。私の中で切り替えスイッチがうまく作動したラッキー鑑賞です。梁井さんには「人間から入っちゃったからだね。その気持ちは分かる」と言われました。セックスって一期一会でオスとメス、みたいな方がラクな場合もありますよね…。

1年ほど前、古いAVを追っていたら、友人が出演するAVに当たってしまったことがあります。とても仲の良かった女性で、間違えようがありません。驚きましたが、「あらま」という感覚でした。好奇心として「どうだったー?」と聞いてみたくはなりましたが、内容を見ようとは思えませんでした。本人にもその話にはしてません。AVに出る事への抵抗や嫌悪感は、私には意外とないんだなぁと知りました。
それにしても、なぜ知らない人のAVは良くて、知ってる人のAVはしんどくなるのだろう。不思議です。
逆に興奮する、という人もいるとは思います。私は友人のAVを見られないけれど、ハマジムのどんなAVを見ても興奮ゼロかというとまーそんなこともなく、いろいろツボにハマる場合もあったりして、さらに勝手に恥ずかしい気持ちになるんですよね。

AVは非日常。でもAV監督である彼らには日常です。リアルなセックスでありつつも、つくられたエンタメ世界。そこを自在に行き来する彼らのAVに、私は時おり混乱します。急に受け止め方が分からなくなり、ぐるぐる感情が揺らされてしまう。私がセックスそのものに抱く「分からなさ」にも関係するんだと思います。身体と心が密接に結びつき、案外複雑なメカニズムを持つセックスというものの正解が、私は今も分からないから。

3年前、梁井監督に初めてインタビューでお会いした時、「AV監督であることを奥さんがとてもイヤがっている。でも自分はAVをやめる気は全くない」という話を聞きました。とても印象的でした。
梁井さんはハメ撮りの最中も結婚指輪をつけている珍しいAV監督です。AVは彼らの日常であっても、見る人にとってはファンタジックな非現実。私には、梁井さんの結婚指輪が不思議な象徴に見えています。現実と非現実を行き来する切符のようなアイテム。夢から覚めたらポケットに残っていた、現実の欠片。
梁井さんはロケの後で直接自宅には帰らず、ワンクッション置く場としてハマジムを経由するそうです。「家は安全地帯にしておきたい」とのこと。「今後もハメ撮りにこだわり続ける」とも言ってました。

上手に切り替えて自分をハンドル操作できる人にしか、AV監督は務まらないのかもしれない、と思いました。奥さんが何と言おうと男の欲望を剥き出すことを正当化して、仕事にできるってすごいことだと思う。切り替えが下手で感情がすぐに上がったり下がったりする私から見ると、途方もない話です。
それでも分からないモヤモヤを抱えつつ、私はまだ当分AVを見るんだろうなと思います。「分からないこともあっていい」とも思っていますが、そういう自分自身に疲れ果ててめんどくさくなるかもしれない。「全部キライ」の引き出しにまとめて入れようとする日が、そのうち来るかもしれないけれど。
山口雅プロフィール

名古屋市在住、会社員。

世界の片隅でタウン誌や映画誌の編集をしています。

2014年6月「テレキャノ名古屋非公式BOOK」をきっかけに、『劇場版テレクラキャノンボール2013』Blue-ray特典ガイドブックを取材編集。
名古屋の自主上映主催は2014年12月「アラウンド・ザ・テレキャノ」「テレキャノ英語版」「バクシーシ山下の社会科見学」「劇場版 どついたるねんライブ」「カンパニー松尾の世界」など。
非公式BOOKも上映のたびに作り続けてます。

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