山口雅のやさしい味噌カツ vol.25
2017-09-20
コラムニスト:山口雅
カンパニー松尾監督の前回コラム「自作ベスト10解説」で、インタビューと編集を担当しました。
あのベスト10、正直「ツッコミたくなるベスト10」だと思っております。「監督が選ぶベスト10」に文句など皆無ですが、個人的にはあーだこーだ言いたいです。

まずですね、私の大好きな作品が入ってない。かすりもしてない。コレは大問題、重要です。あんなに良いのに、あー、残念。そしてツッコミたい。例えば1位に輝いた『世界弾丸ハメドラー TANGO』。あの、言いづらいんですが、キモくないですかね? 愛に溢れた素敵な『TANGO』。ツッコミどころも多い、てか「ツッコミ待ち」ではないのか。監督も衣装を着てタンゴを踊っちゃうAVですよ。面白くないですか? もちろん『私を女優にして下さいAGAIN13』(第4位)みたいな「ワーイ、私も一番好き、パチパチ!」ってのもある。まあ、好き勝手に言ってます。

今回は、ベスト10に便乗してアレコレご紹介します。「マイベスト10」は選べませんでした。試みた結果、諦めました。そもそも私は全てのカンパニー松尾監督作品を見ていない。とてもじゃないが全部見られない。どんだけあるんだ、松尾作。ハメ撮りの悠久な歴史、奥深さを感じます。
以下、順位はないです。マイベストでもないです。「極私的・印象深い松尾作」。一方的に始めます!

● 『劇場版テレクラキャノンボール2013』(2014年)


あえて劇場版を。『テレキャノ2013』はベスト10入りしてましたね。私にとっても重要位置にある作品です。
しかし、決して大好きではない。むしろキライかもしれない。面白かったけど、同時に複雑なモヤモヤも葛藤も抱いてしまった作品。でもコレがなければ、私は多分AVの世界に触れることもなく、ここでコラムを書くこともなかったはず。インタビューや上映等、たくさんお世話になりました。思いはいっぱい詰まってます。
あ、この文章は動画にリンクされてますが、未見の方はぜひDVDもどうぞ。インタビュー集が入ったブックレットの特典あります。オススメです!

● 『家政婦グラマラス さき』(2012年)


最初に見た「松尾監督のドラマもの」です。「奥さんがママ友と旅行に出かけた間に、若くてカワイイ家政婦を雇ったら…」という設定モノ。チープな小芝居モノです。
しかし、私はこれをドキュメンタリーだと思い込んで見たんですよね。カンパニー松尾さんというのはドキュメンタリーAVを撮る監督だと聞いたので「AV監督って、こんなお洒落でモノの少ない家に住んでるのかぁ!」と、じっくりインテリアを見たりしていた。従順な家政婦さんに迫るのも「あ、AV監督の生活って、こんな感じなんだ…」と、ビビりました。
そしてこの話、中盤あたりで急に奥さんが帰ってきちゃうんです。家政婦とデキてるダンナを見て怒った奥さんが、まさかの乱入3P!「AV監督は、奥さんもスゴイんだなぁ…」と、呆然としました。
最近改めて見たら、とっても笑えました。ドタバタになっていく感じがドリフのコントのエンディング風。奥さんの乱入以降、手持ち無沙汰気味になる松尾監督が「床暖、あったかーい…」と言う場面が好きです。

● 『チャイナ 椎名まゆみ』(2006年)


これもビックリしますよ! ワケが分からない。60年代香港のレトロなアパートを舞台に、不思議な物語が展開します。真っ赤なタイトルバック、哀愁を帯びた音楽、階段やドアを出たり入ったりする男女、独特な動きのカメラ…。
これはウォン・カーウァイの『花様年華』という映画のパクリ…じゃなくて、オマージュですね! 本家はマギー・チャンの優美な姿にチャイナドレスが無性に着てみたくなる、切ない香港映画です。しかし、こちらはハマジム版。途中からフツーにいつもの調子でハメ撮りが始まる、謎のAV。
冒頭でいきなりタートル今田さんが殺されてラーメンの器に顔を突っ込み、「ハマジムのトニー・レオン」ことアキヒトさんがクールに登場する『MITSU/チャイナ』もオススメ。
この『チャイナ』シリーズ、今田監督、梁井監督、KENSAKU監督やアキヒト監督によるバージョンもあります。もはや完全にウォン・カーウァイから逸脱した展開。笑えます。In The Mood For Fuck!

● 『恥ずかしいカラダ DOCUMENT 愛咲れいら』(2011年)


私のトラウマ作品。コレを最初の頃に見たために、気軽にカンパニー松尾作品が見られなくなってしまったかも。震災がテーマの一つですが、パッケージには記されてません。でも震災だからというより、私にとっては自分自身を反射して照らされる鏡のようなAVでした。今まで信じて、思い込もうとしてやってきたことがグルンと引っくり返され、「本当にそれでいいと思ってますか?」と突きつけられた気がしました。作り手にそんな意図はないと思います。予想もしてない、とんでもないところからボールは飛んできて、それを急所で受けてしまった。すごく泣いたし、見た後も泣き続けました。2週間くらいずーっとドン底の気分。2週間=半月ですよ! 朝起きた瞬間から凹んでいる。2週間もたつと、なぜ朝からこんな気持ちなのか忘れていて「あ、そうだった…」と思い出しては落ち込み続けました。本当に引きずったなあ。
松尾作品は気軽に見ると大変なことになる、と刷り込まれました。今も用心しています。見るのにいちいち勇気と覚悟が必要。見れば「なーんだ」というのも多い。でも、時々まったく思いがけない角度で飛んでくる銃弾みたいな作品が、やっぱり存在します。毎回、ロシアンルーレットなのです。

● 『恥ずかしいカラダ ESCAPE ましろ杏』(2010年)


ベスト10入りの『恥ずかしいカラダ DOCUMENT ましろ杏』に続く2作目。私はこっちがイイなぁ。
1作目で悲しかった子ども時代を語るましろさんですが、私は何だか乗れませんでした。「幼少時は病弱だったため、忙しい親に代わり祖母の家に預けられた。教育に厳しい母に叩かれて猛勉強させられた」と話す、ましろさん。テロップも「仕事優先の親が育児放棄」「選別としてだけの親」などと追いかけます。でも、彼女の親から見たらどうだったんだろう、と思いました。仕事も休めず泣きたい気持ちで我が子を預け、将来を案じるあまり勉強させていたかもしれない。もちろん彼女自身が「寂しかった」と感じている事実こそ大切なんですが、私は「可哀想な道を歩んできたましろ杏」を強調するテロップに乗れなかった。変に閉じた世界の偏りを感じてしまったのです。
2作目は広い海と広い空、南の島が舞台。ましろさんは相変わらず可愛いです。でも時々ちょっとテンション下がる姿も見えます。そして結局、自分のことばかりに寄せていく松尾監督。この展開、ましろさんが気の毒にも思う。目覚めた彼女はどんな気分だっただろう。
でも、「しょうがないな」と思います。1作目では恋人気分でニコニコ楽し気な二人でしたが、こちらの方が、二人は平等に、同じ地面に立っている気がする。私も多分、それと同じ地面に立っている。誰だって24時間ずっと笑ってられないし、しんどい時はしんどいし、やっぱり一人にもなりたいし、うん、まあ、そんなもんだよね、しょうがないよねー、と、思ったのでした。

● 『YOGA』(2008年)


松尾ベストには入ってませんが、私のベスト3入りは当確です。『テレキャノ』以外で、初めて見たカンパニー松尾作品がコレでした。「えっ、テレキャノより全然こっちのがイイ!」と思いました。上映で拝見し『私を女優にして下さいAGAIN11』も続けて見たのですが、どっちも断然テレキャノより好きだと思った。
数年前に『YOGA』を自分で上映できた時は、本当に幸せでした。同時上映は、松尾監督の希望で『TANGO』に。私は皆の心に『YOGA』をより濃く残そうと、あえて上映順は制作年が古い『YOGA』の方を後にしました。しかし締めのトークで、松尾監督は「TANGOがいかに素晴らしいか」という話に終始。熱弁に押された会場中がYOGAを忘れ去り「TANGO最高!」という雰囲気になってしまった。エーン。私は世界の真ん中でYOGA愛を叫びたかった。『YOGA』、好きです! 大好き! 長い長い車窓シーンを見てほしい! あのラストを見てほしい! 見て!

***

中途半端に6本挙げてみました。現時点で選んだ6本。明日選ぶものは違うかもしれません。
よかったら皆様の「松尾作マイベスト」も、ぜひご一考ください。せっかくこんなにたくさんあるんだし、選び放題です。本当にいっぱいあるよなぁ〜。よくぞこんなに作ったなぁ〜。ハメ撮り隊長はスゴイですね〜。

長々とご清聴ありがとうございました! 終わります!
山口雅プロフィール

名古屋市在住、会社員。

世界の片隅でタウン誌や映画誌の編集をしています。

2014年6月「テレキャノ名古屋非公式BOOK」をきっかけに、『劇場版テレクラキャノンボール2013』Blue-ray特典ガイドブックを取材編集。
名古屋の自主上映主催は2014年12月「アラウンド・ザ・テレキャノ」「テレキャノ英語版」「バクシーシ山下の社会科見学」「劇場版 どついたるねんライブ」「カンパニー松尾の世界」など。
非公式BOOKも上映のたびに作り続けてます。

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