山口雅のやさしい味噌カツ vol.21
2017-04-24
コラムニスト:山口雅
映画狂人を追ったドキュメンタリー『劇場版シネマ狂想曲 〜名古屋映画館革命〜』が、4月29日から名古屋シネマスコーレで公開されます。
東海地区で2月に放送された番組が話題を呼び、劇場版へと広がりました。主役はスコーレに勤める坪井篤史さん。自分の働く映画館で自分の映画が上映されるって、レアですね。今回は坪井さんのインタビューをお届けします。

私と坪井さんの出会いは、7年ほど前。というか認識したのが7年前。
それまでは映画館に足を運んでも、スタッフの方を気にしてませんでした。見に行った映画に感動のあまり思わずアツい上映お礼メールをしてしまい、返信くれたのが坪井さんでした。当時はただの客で(今もですが)、その後、私が情報誌の編集の仕事をしていると知られ「スコーレ30年史」の編集を依頼されたり、さらに私が映画情報誌の担当になって関わりが深まったり、HMJM上映企画を持ち込んだりしつつ、今に至ります。

坪井さんもイッちゃってる人ですが、スコーレもまた相当イッちゃってる劇場です。
地方映画館の閉館が相次ぐ中、松江哲明監督の『フラッシュバックメモリーズ3D』という映画を上映するためだけに突然3Dシステムを導入しちゃったエピソードなんかからも、想像いただけるかと思います。スコーレで見るフラッシュバック〜は最高で、比喩でなくディジリドゥが真横を突き抜けます。
さすがに4DXシステムは導入できなかったらしく、全ての特殊効果を手動で行う白石晃士監督の「人力トビダシステム上映」なんてのもありました。「はぁ?」と思うようなことを真面目に本気でヤる映画館です。イッちゃってる坪井さんからも、私はいつもパワーをもらっています。

今回の番組と劇場版を作ったのは、メ〜テレ(名古屋テレビ)ディレクターの樋口智彦さん。撮影は半年に及び、いつ行っても樋口さんがカメラを回してました。
常軌を逸するVHS部屋と坪井さんの話を以前PGコラムに書きましたが、彼がコラムを読んでくれたことからこの撮影が始まったとのこと。
25歳の樋口さん、実は初めてのドキュメンタリー作品です。それが映画になりました。名古屋発の劇場公開ドキュメントといえば傑作連発の東海テレビドキュメンタリーが有名ですが、個人的にはどんどん混戦していただいていろんな良作を見たいです。
樋口さんは岩淵弘樹監督の『モッシュピット』が大好きだそうで「あんなふうに撮りたいと思った」というシーンも。出演陣は豪華、カンパニー松尾監督も出演されています。
ちょうどGWの時期です。ご興味ある方、ぜひ名古屋にお越しください。B級グルメ天国名古屋、やみつきになる変な食べ物もいっぱいあります。VHS狂人の実物を見ることもできますよ!

お待たせしました。映画公開目前、坪井さんのインタビューをどうぞ!

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− 撮影は昨年6月から開始したそうですね。

去年の春、樋口さんというディレクターから、朝の情報番組の10分コーナーに出てほしいと言われました。映画館スタッフがVHSを集めた部屋を持ってるのを紹介したいと。それが社内で「1コーナーでは勿体ないんじゃないか。やるだけやってみろ」と言われたそうです。
「名古屋で映画館革命をしようとする坪井さんを撮りたい」と樋口くんのカメラが回り始めた。結局、半年ですよ。300時間近い量になってしまったのを47分にまとめ、放送されました。

− 1時間番組で、放送はド深夜の2時でしたね。

ド深夜にガイキチドキュメントを見た人がたくさんいたんです。僕も2時の番組がそんなに見られると思わなかった。しかも「面白い」と評価された。
ツイッターで実況してて「意外と見てるな」とは思ったんです。ビックリしたのは、ツイッターのトレンドに「シネマ狂想曲」が入った。松江(哲明)さんの「山田孝之のカンヌ映画祭」はよくトレンドで見かけますが(笑)。放送地域外の人たちもツイッターを追ってたらしく、僕も樋口くんもスクリーンショットを撮って喜びました(笑)。
驚きの高視聴率が出て、出演した監督たちからの評価も良かった。面白くないもんは面白くないとハッキリ言う厳しい監督たちが、ツイッターの騒ぎを見て「一刻も早く見せてほしい」と言ってきて、「映画の人間である自分にはできないことをやっている」と技術面も褒めてくれた。47分しかない中にポイントが全部入っていて編集で面白くしていると。松江さんの「現時点で今年1位のドキュメンタリー」というツイートも驚いたし、雑誌に原稿を書いてくれたことも驚きでした。すごいことになってきたと思ってたら、映画館やテレビ局に全国から問い合わせが来て。 

− 劇場版に発展したわけですね。

「映画館で劇場版をやりましょう」とメ〜テレに持ちかけたのは僕と支配人です。スコーレのドキュメンタリーだから、スコーレで見るとシンクロする。樋口くん含めメ〜テレさんは、まだ今も心配らしいです。樋口くんが「坪井さんは『樋口くんの人生フルーツだ!』とか言いますけど、本当にそうなりますか?」と(笑)。でも映画は賭け。樋口くんは47分の地上波で賭けに勝ったと思うんです。
彼は何十人もいる番組スタッフの中で、下から5番目らしいんです(笑)。シンデレラボーイになっちゃった。下に4人しかいない新人の彼は、今、社内で「巨匠監督」と呼ばれてるらしい(笑)。

− 反応に困るあだ名ですね(笑)。

「シネマ狂想曲」で検索すると「メ〜テレ 樋口」と出るんです。謎の人物なんでしょうね。全国の人が自分の町で見られるか調べたらしく「シネマ狂想曲 新潟」「広島」とかも(笑)。もう全国配信かと思ってたけど、支配人と話し「次のステップは劇場版。名古屋だけでやってみよう」ということになりました。樋口くんが若手すぎて心配もあると思うけど、彼の賭けには僕らも乗りたい。名古屋でやれるだけやってみたい。

− スコーレで見ることに一つの価値がある。いろんな人が見てくれるといいですね。「特にこんな人に」というのはありますか?

夢を与えられる年齢の人かな(笑)。小学生とか。

− でも18禁ですよね?

違いますよっ!! カンパニー松尾さんが出てる部分は18禁かもしれない(笑)。僕やスコーレのことより「作品」として引っ掛かるといいと思います。よく知らずに見た人に「そんな生き方もあるのか」と思ってほしい。好きなことをして死んでいく奴がいてもいいのかなって。「好きなものは好き、イヤなことはイヤって言ってた方がいいですよ」と伝えたい。映画に笑った後は本人が劇場にいるわけです。人生が楽になるような見方をしてもらえたら嬉しい。スコーレやVHSを知らない人に、新しい発見にしてほしい。
スコーレで見るのがベストだと思います。劇場版は新しいシーンが加わりました。いろんな人に見てほしい。普通の映画のように、世に送り出します。

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『劇場版シネマ狂想曲 〜名古屋映画館革命〜』R指定はありません!
4月29日(土)シネマスコーレにて公開
ナレーション:竹中直人
出演:坪井篤史、木全純治、白石晃士、松江哲明、カンパニー松尾、井口昇、前田弘二、宇野祥平、内藤瑛亮、直井卓俊ほか
監督・撮影・編集:樋口智彦
©メ〜テレ


山口雅プロフィール

名古屋市在住、会社員。

世界の片隅でタウン誌や映画誌の編集をしています。

2014年6月「テレキャノ名古屋非公式BOOK」をきっかけに、『劇場版テレクラキャノンボール2013』Blue-ray特典ガイドブックを取材編集。
名古屋の自主上映主催は2014年12月「アラウンド・ザ・テレキャノ」「テレキャノ英語版」「バクシーシ山下の社会科見学」「劇場版 どついたるねんライブ」「カンパニー松尾の世界」など。
非公式BOOKも上映のたびに作り続けてます。

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