山口雅のやさしい味噌カツ vol.14
2016-08-22
コラムニスト:山口雅
このPGのまとめ人・岩淵編集長が退社されるそうです。
コラムニストの総意で編集長の座の追い出しが決まったのかと思いきや、今月いっぱいでハマジムをクビだとか。ダメですよ勝手に決めちゃ。坊主頭になっていたのは不祥事をやらかしたためではなく、退社理由は「人員整理」らしいです。
岩淵さんが「憧れだったハマジムに入社した」という話から1年。
もともとAVは知らず、岩淵さんの作品は見ていた私にとっては「カンパニー松尾」より「岩淵弘樹」の方が有名人。でも岩淵さんのことはキライでした。『サマーセール』に出てくる岩淵さんが嫌なヤツだったからです。ハマジム入社を知った時は「あの嫌な人か〜」って感じ。その岩淵さんが編集長のPGに、私はコラムニストとして直接関わることになったのでした。

昨年秋にスタートした私の第一回コラム原稿は、全ボツ。メインはカンパニー松尾さんのインタビュー再掲で、自己紹介を不要なおまけの気持ちでサラリと書いて送ったら、岩淵さんからこんなお返事が来ました。
「もっと頑張ってほしいです。カンパニー松尾のインタビューではありますが、僕は山口さんの人間性をもっと見たいです。血の通った文章を読みたいです!」
これがHMJMイズムってやつなの…? 誰も私の情報いらないじゃん…。と困惑しながらも、背筋が伸びました。嬉しかったし、頑張ろう! と思いました。
だから張り切って第二回で松尾さんの母校潜入レポをやり、潜入しすぎて「載せられない」と言われた時は「小っちゃい奴め…」と舌打ちしました。その後も、何度も書き直しを食らいつつ、何とか今まで続けて来れたコラム。劣等生なりに関係を積み重ねてきました。その人間性も含めて今や私の岩淵編集長への信頼は絶大で、ハチ公よりも忠実です。直せといわれれば即座に直し、心配だった原稿でもOKといわれた瞬間、自信満々に。深夜でも原稿を送ると感想を添えてすぐに届くお返事メールは何度読み返してることか。坊主頭でも変なメガネでも、岩淵編集長のジャッジを全力で信頼してます。
監督としては特集上映を組んで名古屋に来ていただいたこともありました。そんな岩淵さんが今どんなことを考えてるのか、聞いてきたんでお伝えしますね。

***

− 退社決定を聞いたのは、いつですか?

7月19日、大分の『モッシュピット』上映から帰ってきた時です。大分はご飯も美味しくて、会場のライブハウスも古くて味があってすごく楽しかった。東京に帰ってきて「また戦いが始まるな」と渋谷の雑踏を見ながら思いました。ハマジムに着いたら、今田さんがいなかったんです。あれ?と思ってたら、松尾さんに呼ばれた。浜田社長と政治さんと松尾さんの役員が座ってて、何となく察しました。「売上が下がってきて人員整理をするから8月いっぱいで辞めてもらいたい。本当に申し訳ない」と頭を下げられた。
そうか、と思って「分かりました。お世話になりました」と答えたら「今田も8月いっぱいだ」と。「じゃ制作部は松尾さんと梁井さんになるのか」と思った。5分くらいの出来事です。会社の空気が超重くて、葬式みたいだった。席に戻って編集に向かったけど、全然仕事が頭に入ってこないんです。「辞めるんだ、俺」って。松尾さんに「今日は帰っていい。奥さんに説明しなきゃいけないだろうし」と言われて「大丈夫っす、大丈夫っす」って言ったけど、やっぱ全然落ち着かなくて「帰ります」って。

− 激動の日ですね。前々から、来るかもっていうのはあったんですか?

「AVが売れない、徐々に下がってる」って話は聞いてた。予兆はあったといえばありましたが年内に良い兆しがあればいいなと思ってた。

− で、帰って奥さんに話したんですね。

そう。今田さんの姿がなかったのは俺と同じで、気持ちが落ち着かなくて帰ってたんですね。帰る前にアキヒトさんから「今田が『岩淵に申し訳ない』って言ってた」って話を聞いたんですが、俺をハマジムに推薦してくれたのは今田さんだったんです。Youtubeにたくさん動画をアップしてた活動も知ってくれてて、岩淵は手が早いからって。
今田さんが「申し訳ない」って言ってくれた気持ちがいたたまれなくて、嫁に辞めることを説明しながら悔しくて泣けてきちゃったんです。でも「今、いいシーンだな」と咄嗟にカメラを回したんですよ。泣いてる俺と嫁を撮ったの。

− 奥さんに話す時に撮ったのはスゴイですね。客観的なもう1つの視点があったんですね。

貧乏性。もったいなくて(笑)。あと、どついたるねんの影響があると思う。Youtubeにあいつらが震災の日に津波警報が出てるテレビ画面の前で歌ってイベントの告知してる動画があるんですが、世界が酷い状況に陥ってもやることをやる姿勢に感銘を受けました。
それから毎日、ハマジムの様子の撮影を始めたんです。日々の出来事を撮ってる。カメラを回すことで、例えば松尾さんとの他愛無い話とかメシ食ってる会話とか、こんなに楽しい日々だったんだなと改めて実感したし、客観的にもなった。
映像制作の姿勢についての比喩ですけど、梁井さんはペンキ屋、今田さんは画家だねって話を梁井さんと昔してたんですが、俺は日曜大工だから気軽に回せる。フットワークの軽さで撮影してます。この撮影素材をどうするかは未定です。



− ツイッター発表時の反響は大きかったですね。2人のツイートが何百RTとかなってた。

世間の衝撃のデカさにビックリしたよね。でも1ヶ月前には人員整理のことを聞いていたから、発表の時には自分の気持ちは整理できてました。俺個人としては1年で何ができたのかって反省がありますよね…。ハマジムのAVを解説したりしてきたつもりなんだけど、売上に結び付かない…。
好きなことで食べていく楽しさと厳しさを痛感できたのは大きかった。だからこれからも映像で食っていきたいなと思えるようになったんですよね。介護職の5年間は映像で食っていくなんて無理だと絶望してた。映像を作るのは趣味、遊びの延長でしかなかったから、この1年で意識が結構変わったよね。

− 在籍中のたった1年に自作の劇場公開もあって、すごい1年ですよね。

7月頭、『モッシュピット』の上映とハバナイライブがあった渋谷WWWで「この1年の撮影の区切りがついたな」って思ったんです。入社した月にハバナイと出会い、今田さん、梁井さんとのPV撮影からちょうど1年なんですよね。
ハマジムに入るまで映像発表の場がほとんどYoutubeだったせいか、劇場公開に興味がなくなってたんですよ。でも、『劇場版どついたるねんライブ』を見て劇場でやる面白さを思い出した。劇場スタッフ、お客さんの気持ち、デカいスクリーンで観る気持ち良さ。映画館って面白いなと思えた1年でしたね。

− ハマジムを辞めると聞いても、岩淵さんが映像を辞めるとは全く思わなかったです。

そうですね。だから心配なのはハマジムっすよ。いかにハマジムがAVを作り続けられるか。

− でも、普通に考えたらですよ?「会社に突然誘われて、新婚だけど前の仕事を辞めて、入社して張り切ってたら1年でクビ」って話にも見えるわけですよね。さらにクビなのにその会社を応援したいって言ってる。特殊ですよ。皆、残業イヤだとか上司の飲みの誘いの断り方がどうとか、世の中そんな話ばっかじゃないですか。ライフワークバランス、いかに快適に働くかって。

うーん…。だって好きな会社で好きな仕事でさ。ライフワークバランス、別にないもん。俺は夜中、松尾さんと編集中に「岩淵、このyoutube面白いぞ」「そっすね!」みたいなひとときが楽しいし、それは仕事じゃないもん…。だから怖いのは、仕事じゃなくなることだよね。この席に座ってる意味がなくなってくのが怖い。何かやることがあればいられるけど、なくなったら怖いなって。

− ただ遊びに来るわけにもいかないしね。

そうなんですよ。だからもっと働きたいし、やりたいなって感じ。

− 今後やっていく映像の仕事に、アテはあるんですか?

ないです。会う人、会う人に「仕事ください」って話してるけど、具体的な話はまだないっす。嫁は「不安だから会社に所属してほしい」と言うけど。

− 自分で思うハマジムへの一番の功績って何ですか?

テレキャノでハマジムを知った人たちに届く情報を作るのは、少しはできたと思うんですけどね。松尾さんが考えてた「ハマジム・ザ・ワールドでエロ本のモノクロページ的な部分を作りたい」という実験をやれたと思う。松尾さんがやりたくてやれなかったことをやってみた。

−私は2人が辞める話を聞き、今田さんのAV引退はツイッターの発表で知った。あの時点で今田さんは吹っ切れてると感じたけど、岩淵さんはどうしてるかなと思ったんですよ。

じゃ、このインタビューで安心してくれました?

− 安心はしないですよ。けど、しょうがないなって感じ。

しょうがないよねー。しょうがないよなー(溜息)。

− でもね、きっと大丈夫ですよ。大丈夫!

ね。心配なのは、ハマジムですよね!(笑)



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山口雅プロフィール

名古屋市在住、会社員。

世界の片隅でタウン誌や映画誌の編集をしています。

2014年6月「テレキャノ名古屋非公式BOOK」をきっかけに、『劇場版テレクラキャノンボール2013』Blue-ray特典ガイドブックを取材編集。
名古屋の自主上映主催は2014年12月「アラウンド・ザ・テレキャノ」「テレキャノ英語版」「バクシーシ山下の社会科見学」「劇場版 どついたるねんライブ」「カンパニー松尾の世界」など。
非公式BOOKも上映のたびに作り続けてます。

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