『劇場版アイドルキャノンボール2017』 カンパニー松尾監督インタビュー <後編>
2018-02-16
コラムニスト:カンパニー松尾
『劇場版アイドルキャノンボール2017』
カンパニー松尾監督インタビュー <後編>

渋谷HUMAXシネマで公開中の『アイキャノ』。カンパニー松尾監督のインタビューです。
編集の話、新メンバーの岩淵弘樹・エリザベス宮地について、そして「結婚」を語る後編です!
(取材・編集:山口雅)

●当時の僕らと同じ状況に陥る目線です

− 頑張りがあまり映ってない人、結局あそこで何をしていたか分からない人もいますね。

そうですね、可哀想ですけどね。今回の編集はバランスが悪い。一応考えて編集したけど個人が頑張ってるシーンがあんまりないんですよね。結果から全部入っちゃう。
今回はプレゼン映画になっちゃった。テレキャノもそうだけど、本来もっと同時進行で、彼らが撮った画を先に見せてから会議に入るのね。今回は彼らが頑張ってる画が少なくて、見せ方としては可哀想。つまり当時の僕らと同じ状況に陥る目線です。人の動きが分からないままプレゼン会議に突入する。そこがワンパターンで、ちょっとつまんない。

− そこで見せ場がない人は、何もなくなっちゃうわけですね。

そうなんです。だからシビアな営業会議になっちゃって、お前は頑張ったのか、頑張ってないのか。常に突きつけられるシーンの連続。
まあ俺もね、ちょっと考え直したりもしたんだけど、それで編集しちゃった。「監督たちの躍動感がないな、あまりに撮ったものを見せてないな」と少し改良したけど、抜本的に直すまでは至らなくて。

− それは、単純に尺の問題で?

関係ないといえばないんだけど、今回は先にニコ生やBiSHの映画があり、結果がみんなバレてるなと思った。あと今回、映画的エモーショナルさは、あんまりないんです(笑)。だからこういうドライな見せ方もありかな、って感じ。
映画的なカタルシスより自分たちが参加した会議・会議・会議。それを味わってもらおうかなーと。映画好きな人とかは全然ダメなんだろうな。映画じゃなくて、ただの会議。「こんな会議ありますよ」みたいな(笑)。『シン・ゴジラ』の中略をしない感じ。会議ばっかりで「ゴジラは何だったんだろうね」みたいな(笑)。

− そうしたのは、どういう人が見るかを想定した意識もあるんですか?

アイドルファンが見に来ると思った。だから、アイドルは少なくていいのかなと(笑)。

− え?(笑)それなら逆じゃないですか?

うん。同時に、もう一度テレキャノファンに劇場に来てほしいなとは思った。アイドルファンにとって裏切りかもしれないし、テレキャノファンにとっては楽しみになるだろうなと。どっちかというとテレキャノ寄り。

− 完全にそうですよね。

うん。でもアイドルファンに「アイドルとは何か」というのを今回あんまり提示できてないのは、良くないかなー。BiSキャノは何だかんだ、そこが出てたから。

− すごく出てましたね。

ね。だから俺は、こないだBiSキャノを見て「よくできてるじゃーん!」と思った(笑)。みんな公開当時はブーブー言ってさ! BiSキャノは、テレキャノ要素が少なくなった膠着状態においての戦い。渋ーい戦い。

− まさにそうですね。渋すぎる戦い。

派手さがないアッパーではないものになった。けど、今回は今回で、相変わらずタイトルや宣伝から離れたものを、あえて作ってしまった。俺も天邪鬼だからね。

●初参戦の純粋坊やたちに、初心を突きつけられた

− 岩淵さんの結婚の話が、とても印象的でした。

あの話は、純粋でいいですね。カメラが回ってるというのもありますけど。
今回、アイドルキャノンボールとかいっておいて、出口が全然違う。そこは面白かった。
「やりたいことやるために一緒になったんじゃないですか」というのは「え?」と思った。ずいぶん前に忘れてたこと。素材を見た時、面白いなと思ったのはそれでした。
結婚というテーマだと「え?」と思うけど、仕事として考えると、初参戦の岩淵や宮地のような純粋坊やによって忘れてた初心を突きつけられた気がして、素材を発見した時は嬉しかったんです。ちゃんと根っこの部分で持ってるのは良いなと思った。
僕は愛情とか家族は、許し合える、許すことだと思うけど、その許すというのを純粋に言葉にするとあの言葉になるのかも。夫婦、仕事も、本来そういう形で結びついてる。やりたいことをやるために一緒になった。でも現実的なしがらみがある。
例えば岩淵と僕だって、社員として来てもらったにもかかわらず、こちらから辞めてくれと言ったりね。僕と岩淵でさえ、ある。だけど根本に戻れば、そういう精神性を共有して、改めてそう思ってやりたい。彼が持ち出してきたものは、青臭いけど忘れちゃいけないのかな、と思った。そんなとこまで行くと思ってなかったしね。

− エリザベス宮地さんは、また極端でしたね。

宮地はこれを見て、自分のことをどう思うのか分からないけど、思うところがあってほしいなと思う。
あの中で宮地が「キャノンボールだからといって、人の心を踏みにじるわけには〜」とか言ってるけど、自分が勝手に言ってるだけ。仕事としてぶつかってるわけだから、恋愛感情があったとしても、そこは置いといて、仕事としてぶつかっていかないと突破できないわけ。
つまり取引先の女に惚れたわけじゃないですか。他の会社の受付に惚れたって話でしょ?「仕事はさておき、プライベートで食事しませんか」。本末転倒じゃんって話ですよ。でも彼は唯一、サラリーマン経験がない。一応みんなあるもんね。会社組織に一度も属してない宮地は、あまりにコドモなんですよね。中学生を通り越して、俺は小6説を唱えてる(笑)。だから、仕事をちゃんとやった上なら良いし、出会いは職場でもいいんですが。

− 仕事で知り合って、恋愛になるのは普通によくある話ですよね。

よくあるけど、仕事をほっといて「付き合ってから仕事したいです」ってか? 俺は上司としてビビりましたよ。

− そうですね(笑)。

むごいけど、あの出来なさ加減は知っておかないと。こっちも遠慮するわけにいかない。もっとみっともなくさせても良かったけど、そこは武士の情け。武士の情けがもう公開されてます。もっとクソみじめな話にしてあげるのが、愛情ある話ですよ。
あいつ、泣き散らかしてるけど、実際はあんなもんじゃないもん(笑)。マンガみたいな提灯鼻水をワンカット使ってますけど、小学生が泣き散らかしてます。

− 会議では本当に亡霊みたいな姿でしたね。

もう、ねー! ずーっと石のように固まってますからね。すごいっすよね。会議の態度も、そもそもダメじゃないですか。あんな落ち込みやすい人、会議に入れたくないですよね。普通はリカバリーも考えて会議するじゃん。「今回、結果は出なかったんですが、次はこうします」というタフさで、みんなやるわけじゃん。何もしていないことに会議中に気づくという(笑)。

− 岩淵さんの最後の言葉を、宮地さんが言えばまだ良かったのに…と思いました(笑)。

うんうん、確かに。それくらいの気概があればねー。俺にやらせてくださいって。宮地には酷だけど、ああいう男だからね。これを自分で見ても今後、小6がどうなるか分からない。もちろんフリーランスの宮地の良さはあるから、皆が買ってるわけだしね。
でも俺は宮地が男の子から男になるものも見てみたい気もする。このまま天然ピュアでいくのか。酸いも甘いも嚙み分けた宮地も見てみたい。

●結婚は理想からかけ離れた現実が待ち受けている

ミュージシャンの豊田道倫さんが、俺が撮った『映像集3』で良いことを言ってるの。「結婚せず、ピュアなままでやってる音楽家もいる。純粋に音楽を追求している人もいるけど、このまま自分もそうなっていくのはつまんない。結婚して子どもができて、濁っていく部分に興味がある」みたいなことを言ってる。俺は当時ピンと来てなくて、豊田さんはピュアなままでいいじゃん、と思った。けど、今は、なるほどと思う。受け入れることで豊田さん自身もだいぶ苦労するし、歌も変わっていくけれど。

− 「モノを作る人は幸せになっちゃいけない」という話も、一般的にあると思うんです。「結婚して子どもができて幸せです」となっていいのかって。

でも、俺は結婚して子どもがいても幸せじゃないと思うよ。苦労の方が多いぞ。ピュアなままの方が楽。結婚しない方が、楽。だから、そういうことも受け入れた宮地も見てみたい気がする。今のままじゃ小6だもん。
確かに俺も、結婚する前は、結婚は良いもんだと思ってた。だから結婚してるんだけどね。でもやっぱり結婚するのは大変ですよ、本当に。俺もこんな大変だと思ってなかった。耐えがたきを耐え、って感じですよね。
「やりたいことをやるために一緒になった」は理想だけど、そこから遠くかけ離れた現実が待ち受けている。やっぱり夫婦は他人だから、他人が一緒に暮らしていくのは、すごくお互いを考え、許していないと成立しない。結婚するまでは、自分がやりたいと言えば言うことを聞いてくれると思ってた。ADとは思わないけど、そういう感じしか思ってなくて。

− サポートをしてくれる。

そうそう。もちろんサポートしてくれるけど、それ以上に相手のことをいかに許すか。できない人が多いし、できるようになるまでがね。結局そういうことだから。
…なんで結婚の話になったかな?(笑)

− 結婚も、テーマの1つにある映画ですから(笑)。

そうですね(笑)。だから、出口が違うんです。アイドルから始まり、撮影とは、監督とは、仕事とは。俺もそっちに行っちゃったんです。本当に自分たちがその時受けた衝撃をそのまま伝えたい編集になっちゃった。だからアイドル映画だけど、出口は違うんです。

− 「アイドル映画」といわれると、語弊がありますよね(笑)。

今回はね(笑)。「アイドル」と書いてあるだけで見ない人はいっぱいいると思うけど、そもそも「テレクラ」と書いてあって見に来たんだから、アイドルと書いてあっても見に来い! って感じだけどね。テレクラも意味不明だけど(笑)。意味不明の方がいいのかな?

− 分からないから良いんですよ(笑)。「アイドル」と言われると「あ、僕だ、私だ」
とか「アイドル興味ないから」と思っちゃう人がいるから。

うん。だから、これはアイドル映画ではないです! 強く言いたい! 男の仕事映画です!

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『劇場版 アイドルキャノンボール2017』
出演:BiS BiSH GANG PARADE WACKオーディション参加者
 渡辺淳之介 高根順次 平澤大輔 今田哲史
 カンパニー松尾 バクシーシ山下 アキヒト 梁井一
 嵐山みちる 岩淵弘樹 エリザベス宮地 他
プロデューサー:渡辺淳之介(WACK) 高根順次(SPACE SHOWER TV)
監督:カンパニー松尾
製作:WACK INC. SPACE SHOWER NETWORKS INC.
配給:日活



















カンパニー松尾プロフィール

AV監督。1965年愛知県生まれ。

1987年、童貞でAVメーカーV&Rプランニングに入社。
翌88年、監督デビュー。特技はハメ撮り。趣味はカレーとバイク。
1996年、V&Rを退社しフリーとなり、2003年、自身のメーカーHMJM(ハマジム)を立ち上げる。
代表作として『私を女優にして下さい』、『テレクラキャノンボール』など。
2014年2月『劇場版 テレクラキャノンボール2013』が公開され大ヒット。
さらにアイドルグループBiSの解散ライブを追った『劇場版 BiSキャノンボール2014』が2015年2月に公開されヒットし、ちょっと調子に乗っている感あり。

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