『劇場版アイドルキャノンボール2017』 カンパニー松尾監督インタビュー <前編>
2018-02-14
コラムニスト:カンパニー松尾
『劇場版アイドルキャノンボール2017』
カンパニー松尾監督インタビュー <前編>

渋谷HUMAXシネマで公開中の『アイキャノ』。カンパニー松尾監督のインタビューをお届けします。
『テレキャノ』は『BiSキャノ』へと派生し、さらに『BiS誕生の詩』を挟んでの「キャノンボール」。公開まで間が空いた理由、チーム制の導入、プロデューサーとしての目線、バクシーシ山下のスゴさ…などなどを語る前編です。

(取材・編集:山口雅)

●待って待って待ち詫びて「ようやく公開できたか」と、ホッとした

− 無事に劇場公開されましたね。

ようやくという感じです。1年前の2017年3月末〜4月の撮影で、10ヵ月くらい経ってます。そもそも秋公開を目途にやってました。ぶっちゃけ話ですが、2017年10月の東京国際映画祭を狙ってたんです。高根プロデューサーが「狙いましょう」と。ただ、コンペ部門ではなく特別上映枠ですけど。

− 「レッドカーペットをアイドルとAV監督が歩いたら面白いんじゃないか」という話でしたよね。

そう、高根さんがレッドカーペットを歩かせたいと言ってくれて「シャレで面白いね」と。10月に映画祭でプレミア上映、年明け公開に合わせて作ったんです。その事前審査のために、骨格は7月に出来ていた。でも映画祭出品は叶わなかった。結果が出たのは8月で、いったん気持ちはそこで途切れたんですね。
『BiSキャノンボール』以降の一連は、スペースシャワーTV配給でした。テアトル新宿からスタートし、名古屋・大阪・広島・福岡あたりまでがテリトリー。でも今回は高根さんが「規模を少し広げたい」と、日活さんでやることになったんです。僕はコトの大きさがよく分からないし、何でも良かった。今回は初めて北の方で上映される。仙台や札幌まで行くんです。ただ、その調整で2月公開まで延期になりました。そんな経緯です。
通常の映画公開のスパンよりは短いけど、自分の中では、待って待って、待ち詫びて「ようやく公開できたか」と、ホッとした感じでしたね。

− スパンが短い本業のAVに比べたら、なおさらですよね。

むちゃくちゃ寝かせましたよ! 『テレクラキャノンボール』でさえ撮影から半年だったので、今回は長かったですね。ずっと編集しながら俺一人で笑ってたから、ようやくみんなで共有できてよかったなーと(笑)。嬉しかったですね。

− お客さんの反応も良かったですね。

そうですね。今回はテレキャノ要素がBiSキャノより強いし。

− 私は今回、すごくパーティ・ムービーっぽいと思いました。

映像は会議室ばっかりですけどね(笑)。

− モニターで拝見した時と印象が違いました。Weekday Sleepersさんと話したら感想が一致し「全然違うね、映画館で見る方が面白いね」と。ヌケというか劇場空間が合ってますよ。映ってるのは部屋の中かもしれないけど(笑)。
あと、テレキャノもみんな大笑いしてましたが、あれは女性の人生も垣間見えたり、影も描かれている。アイキャノはそれが強くは見えない分、アッパーでポップコーン食べながら見られるパーティ・ムービーに近いかなって。そういう意味では分かりやすい。経緯や背景はすごく分かりにくいけど、逆に笑えるんじゃないかと思いました。

そうですね。確かにテレキャノは、見終わって一人になった時「笑って良かったのかな」という部分があったと思うんです。それも含めて見てもらいたいと思ってた。今回は単純におじさんたちに共感というか、おじさんたちの世界に入っていただければ。単純に面白おかしく、かつ感動できるかどうかは知らんけど、そんな方向性ですよね。
ただ、見方によっては分からない。アイドルファンも多いだろうし、何か感じてほしいなと思って作ったけどね。入り口はアイドルだけど、出口は違う形にはしましたね。

●俺も実はアイドル側に飲み込まれてるんですよね

− アイドル側から映画を見た人も、BiSキャノみたいな気持ちにはならないんじゃないかと思います。

まあ、そうですね。でも先日BiSキャノを改めて見たら、やっぱ良いね。

− BiSキャノは良いですよ!

でも、良さを人に分かりやすく説明できないよね。ヒリヒリ感が良かったけど、それに比べるとアイキャノはヌルい。戦いを避けてる部分がある。俺も正面の戦いはもう避けた。それは経緯がある話だから。
ビーバップみのるのワンカットを使ってますけど「戦っちゃったら終わっちゃう」。戦いの第一章はBiSキャノで終わってるんです。BiSキャノの時点では、アイドルのアの字も知らないままドキュメンタリーを撮ろうと思ってた。でも、それ以降もBiSや渡辺淳之介と付き合ってきて、俺も実はアイドル側に飲み込まれてるんですよね。だから俺自身、もう正面で戦うことができていない。
ルールを作り、アイドルのハメ撮りを目指す行為も変わらないけど、俺自身はあんまりそっちへ向いてないんだよね。だけど面白いものは作りたいから、新たなメンバーでやることでもう一度ちゃんとルールを引いてやれたら、とは思ってた。
だから今回はね、要素を変えてみたんです。1対1でぶつかると突破できない袋小路になって先に進めなかったので、チーム制タッグ戦にした。

− なるほど。BiSキャノからの改善だったんですね。

うん、反省ですね。チーム制の方が面白いなとも思った。手は施してるんです。誰かが調子悪くても、別の誰かが行けるとか、弱点を補完できればと思いました。
『BiS誕生の詩』も挟み、何度か撮った上での傾向と対策。アイドル側に寄ったドキュメンタリーでも、気まずくなっても、どっちに振れてもいい体制は取っておいたつもりです。
で、映画の中で濁してますが、俺自身はそっち側に行っちゃってる人間なんで、現場で曲取り合戦に感情移入しちゃったんです。他の人が頑張ってくれて、対策を施しておいてよかったなって感じです。

− 今回、松尾さんが全然、前を走ってないですよね(笑)。山下さんはあんなに頑張ってるじゃないですか!

山ちゃんはすごかったね(笑)。

− テレキャノでは松尾さんと山下さんが、やっぱり皆を先導する立ち位置にいたのに。

俺は引いてます(笑)。卑怯な戦い方だけど、殿は後ろで深く守ってる。「行けー、行けー!」って戦場の状況を見てて、ヤベーと思ったら引く。最初からそういうポジションにいます。

− 戦隊の皆がケガをしないように?

違います。第一線を突破する騎馬隊は行かせておく(笑)。山下隊があそこまで頑張るとは思いませんでした。

●負け戦だと分かってる。俺の中でどうプラスにするかだけ

− 山下さんは本当に素晴らしいですね。それに引き換え、松尾さんはどういうことになってるのかと。何度か見ると、これは余計そう思うと思います(笑)。

はい(笑)。僕はですね、実は2つセーフティがあった。最初からそう思ってましたね。そこで面白くできればと、合宿では引き気味でした。僕も頑張ってる部分はあるんです。でもその頑張りは、アイドルに対してなんですよね。エリザベス宮地のBiSHの映画があったでしょ。

− 『ALL YOU NEED is PUNK and LOVE』ですね。

そう。あの戦いは宮地と一緒に頑張ってる。曲取り合戦は撮れてるんです。あれはキャノンボール隊としては無視していい話ですが、俺と宮地と岩淵は、しっかり参加して女の子たちとの接点を持っている。だから、隊の形や戦法は考えた上で「行けー!」と声を出してるだけです(笑)。

− (笑)振り返ったら、殿がいない感じですね。

今回は負け戦だと分かってる。後は、どう上手く俺の中でプラスにするかだけ。どう引き分けて帰ってくるか。

− 負け方の問題ですか?

そう、負け方の問題。帰る時に「君らが戦ってる間に、実はお米だけ盗んでおきました」みたいな。

− セコい感じですね…(笑)。

セコいのがアイドルキャノンボール。後日、お米が出てきますからね。こういう作戦で本隊が進んでる時に、俺は脇に回ってお米をかすめ取る。「宴会の用意だけはしときました。戦いは疲れますから」と、後でメシ食う段取りをしてるんです。ある程度戦ったフリして、早めに引いて美味しいものを最後に用意しとく感じです。

− でも、チーム制や段取りを含めてよくそんなことを考えたなぁと思います。

そういう折衝。BiSキャノはガチだから、ああなっちゃった。今回はお互い敵の顔も知ってる。ただ、どこまで行けるか分からないんですよ。互いに信じてるけど、分からない部分で腹の探り合い。そういう中でやっている。
いろんな戦いの中で、今まで撮ったBiSキャノ、BiS誕生を踏まえた上で「またキャノンボールか」という時に、俺は条件を付けたんです。メリットがほしい。ベタにいえば、ハマジムに著作権があるものを残したかったんです。

− AV版とか完全版とかは。

できますよ。まず、派生版としてBiSHの映画ができちゃったしね。通常あの形なら、スペシャ版はアイキャノの前半だけ見せればいいわけです。BiSキャノでやったパターン。(注:BiSキャノは公開前にスペースシャワーTV版が放送された)
「もう一つ物語ができるんじゃないかな、合宿に行けば見つかるんじゃねーか」と、俺と高根さんは思ってた。アイキャノ公開前のスペシャ版は曲取り合戦の『オーケストラ物語』になったけど、合宿中、いろんなところに目配せしながら面白そうな人を見つけては追いかけてた。今に至ってはゼロ素材ですけどね。今回はアイキャノのロケに行ったのに、BiSHの映画がちゃんとできてる。そういうことも見ながら戦ってます。

− プロデューサー兼プレーヤーということですよね。

まあ俺の場合、テレキャノもそうだけど、正直、昔からプレーヤーじゃないんですよ。監督兼プロデューサー兼、という立場です。そこを置いて突っ走るくらい熱中できればいいけど、あんまり熱中できないっすよねー(笑)。他のバランスを気にするタイプなんで。そもそも俺は一人勝ちに行く性格でもないし、勝ちにこだわるタイプじゃない。走ってもらってその人たちが頑張ってるのを、俺が楽しむタイプ。だから「用意、ドン!」って言うだけで俺は走らない(笑)。そこは徹底してるんですよ。マラソンも放棄してるし。

●山下は流れを意識する。追い風を読むから強い

− そうですね。そしたら、山下さんがスゴかった。素晴らしいですよね。

山ちゃんは素晴らしい。でも俺はさ、今は素晴らしいって言うけど、合宿中はホントは悔しかったよ。あの人、面白いから。とにかくマラソンを早くやれってうるさいのよ。トレーニングしてたから、間をあけるのが怖かったらしい。

− トレーニング?

うん。山ちゃんはマラソンが決まってから2週間、毎日5キロ走ってた。

− えーっ!(笑)

あの3種目は事前に伝えてあって、マラソンも準備してきてたの。とにかくあいつは自分が勝つためにルールを持ってくる。マラソンが合宿2日目の朝から始まったんだけど「そこで俺たちが全員いきなり走ったら、おかしくねーか?」と俺は言ったのに(笑)、山下は自分の都合でピークを仕上げてきてるから「早く走らせろ」と。距離もすごく気にしてて「5キロしか練習してないからそれ以上はダメだ」とか、ワケわかんないこと言ってた。山ちゃんがまさかマラソンを用意してくるとは思わなかった。

− 山下さん、もともと苦手そうですよね。

そうなんです。梁井が元陸上部で、苦労なく勝つだろうという下馬評で、あとは体力あって運動が得意なのはアキヒトぐらい。今回、山下が頑張ってくれたのがやっぱり一番うれしい。山下は流れを意識するんです。実はBiSキャノでも最初につまづいてる。俺にジャンケンで負けて、ウイカさんを取られたんです。

− ああー、そうでしたね。だから頑張れなかったと。

そう、悪い流れから始まっちゃった。車でカミヤサキを送って行って1位だったにも関わらず、すき家のメニューが多すぎた(笑)。で、山下はみちるに負けたじゃないですか。追い風を読むから強いわけ。だから風が吹かない状況だと「ヤバイな、ヤバイな」と、どんどん風をつかめなくなる。

− 確かにテレキャノでも「北海道は俺のために開拓された」、今回も「この街に俺は呼ばれていない」とか、発言されてましたね(笑)。

ああ、そうだね! すぐそういうこと言うの。「悪い勝ち方だ」という発言もある。風を読む。なかなか言えませんよね。岩淵なんて、勝てば万歳、負けたらしょぼん。

− 普通はそうですよ!

悪い勝ち方、良い負け方。そういう意味では、俺は良い負け方を最初から選択してたかもしれないですね。ハマジムとしてもね。いかに良い負け方をするか。卑怯だけど真正面にぶつかりすぎて何もないより、さらに卑怯になって帰ってきた。

− なんか、聞こえが悪いですね(笑)。

俺は、すごく悪いよ(笑)。まあ主張することでもないしね。

(後半につづく)

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『劇場版 アイドルキャノンボール2017』
出演:BiS BiSH GANG PARADE WACKオーディション参加者
 渡辺淳之介 高根順次 平澤大輔 今田哲史
 カンパニー松尾 バクシーシ山下 アキヒト 梁井一
 嵐山みちる 岩淵弘樹 エリザベス宮地 他
プロデューサー:渡辺淳之介(WACK) 高根順次(SPACE SHOWER TV)
監督:カンパニー松尾
製作:WACK INC. SPACE SHOWER NETWORKS INC.
配給:日活


















カンパニー松尾プロフィール

AV監督。1965年愛知県生まれ。

1987年、童貞でAVメーカーV&Rプランニングに入社。
翌88年、監督デビュー。特技はハメ撮り。趣味はカレーとバイク。
1996年、V&Rを退社しフリーとなり、2003年、自身のメーカーHMJM(ハマジム)を立ち上げる。
代表作として『私を女優にして下さい』、『テレクラキャノンボール』など。
2014年2月『劇場版 テレクラキャノンボール2013』が公開され大ヒット。
さらにアイドルグループBiSの解散ライブを追った『劇場版 BiSキャノンボール2014』が2015年2月に公開されヒットし、ちょっと調子に乗っている感あり。

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